執行猶予(全部)期間中に犯罪を犯してしまった場合、執行猶予が取り消される可能性は高いですが、取り消されない場合もあります。
再犯により執行猶予が取り消されることに関し、法律(刑法)は、以下のように規定しています。
①執行猶予の期間内にさらに罪を犯して禁錮以上の刑に処せられ、その刑について執行猶予の言い渡しがないときには、必ず執行猶予は取り消される。
②執行猶予の期間内にさらに罪を犯し、罰金に処せられたときは、執行猶予が取り消されることがある。
①を必要的取消しといい、②を裁量的取消しといいます。
そして、法律上、刑の執行猶予の言渡しを取り消されることなく執行猶予の期間を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失うと規定されています。
つまり、執行猶予期間内に犯罪が行われた上で、その期間内に有罪判決が確定し、さらに執行猶予取消決定が確定した時点で、まだ執行猶予期間内だった場合に、執行猶予が取り消されることになります。
したがって、執行猶予期間中にさらに罪を犯したときでも、それが執行猶予期間満了の直前だった場合には、刑事裁判で有罪判決が確定し、さらに執行猶予取消決定が確定する前に、執行猶予期間が経過すれば、執行猶予は取り消されず、執行猶予付判決の刑の言渡しは効力を失うことになり、執行猶予は取り消されないことになります。
さらに、執行猶予期間中にさらに犯した罪で、禁錮以上の刑に処せられた場合でも、再度の執行猶予が認められれば、執行猶予は取り消されません。
再度の執行猶予が認められるのは、執行猶予中の者がさらに犯した罪で1年以下の懲役・禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときと刑法で規定されています。
情状に特に酌量すべきものがあるかどうかは、裁判所の裁量的な判断がなされるところですので、一概に、どのような場合にその要件を満たすかは申し上げられません。
ただし、再度の執行猶予は、例外的であると思われます。
なぜなら、一度執行猶予付の有罪判決を受けたことで、少なくとも執行猶予期間中に再び罪を犯してはならないことを十分認識していたにもかかわらず、罪を犯してしまったことの問題は大きいからです。
具体的な状況で、再度の執行猶予を認められるか、どうしたら再度の執行猶予が認められるかかについては、刑事事件に詳しい弁護士に相談していただくのが良いと思います。
それから、執行猶予期間中に、さらに犯した罪で罰金に処せられた場合は、執行猶予が取り消されるときと、取り消されないときがあります。その分かれ目は明確ではありません。
裁判所の裁量的な判断となります。
一般に、執行猶予期間中に、さらに罪を犯した場合、そのこと自体が罪を重くする要素になりますので、罰金で済むことは少ないです。
罰金で済んでいるということは、交通違反のように犯した罪が比較的軽微な場合や、被害者に対する被害弁償がなされている等の刑罰を軽くする事情があることが想定されますので、執行猶予が取り消されない可能性が相当程度あると思われます。
これについても、詳しいことは弁護士に相談されることをおすすめします。