保釈の際に裁判所に納付した保釈金(保証金。保釈保証金ともいいます。)については、特別の問題が起きなければ、刑事裁判の終了後に全額戻ってきます。
これに対し、保釈が取り消された場合には、保釈金の全部または一部が没取(ぼっしゅ)されることがあります。
没取という言葉は、まず聞いたことがない人が多いと思いますが、刑事罰としての没収と区別されています。
そのため、没取は、ぼっとりと実務的に呼ぶこともあります。
没取となった場合、保釈金の全額または一部が戻ってこないことになります。
保釈が取り消されるのは、以下の場合です。
①被告人が裁判期日等の召喚を受けたのに、正当な理由がなく出頭しないとき。
②被告人が逃亡した場合または逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
③被告人が罪証を隠滅した場合または罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
④被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者またはその親族の身体・財産に害を加えた場合もしくは害を加えようとした場合、これらの者を畏怖させる行為をしたとき。
⑤被告人が住居の制限その他裁判所の定めた条件に反したとき。
これらの理由により、保釈が取り消された場合、保釈を取り消す旨が記載された裁判所の決定の謄本を被告人に示した上で(急速を要するときは事後的に示すことでも許されます。)、被告人は収監されて身柄が拘束されます。
さらに、裁判所が、保釈金の全部または一部を没取する決定を出すことができると法律上規定されています。
ですから、保釈が取り消された場合に、必ずしも保釈金が没取されるとは限らないことになりますが、実務的には多くの場合で保釈金が没取されているものと思われます。
また、保釈された者が、刑の言い渡しを受け、その判決が確定した後、刑の執行のため呼出を受けたのに正当な理由がなく出頭しないとき、または逃亡したときは、検察官の請求により、裁判所は、必ず、保釈金の全部または一部を没取することになります。
保釈金の没取の事例として、パソコン遠隔操作事件で冤罪を主張していた被告人が保釈金1000万円で保釈された後、スマートフォンを使用して真犯人が他にいるかのような偽装工作をしていたことが発覚したときに、大きなニュースになりましたが、保釈が取り消された上、保釈金の一部である600万円が没取されたことがあります。