浄水汚染等致死傷罪とは、浄水汚染罪・水道汚染罪・浄水毒物等混入罪を犯し、よって人を死傷させる犯罪です。
浄水汚染等致死傷罪は、刑法145条に規定されています。
刑法145条において、浄水汚染等致死傷罪の刑事罰については、「傷害の罪と比較して、重い刑により処断する」と規定されています。
この規定の意味について、古い裁判例で、法定刑の上限が重い方の犯罪の規定に定められた刑罰に従う旨が判示されました。
そうしますと、傷害の結果の場合には、上限が重い傷害罪の法定刑である15年以下の懲役または50万円以下の罰金になります。
死亡の結果の場合には、上限が重い傷害致死罪の法定刑である3年以上の有期懲役(20年以下)です。
本罪は、基本となる犯罪である浄水汚染罪・水道汚染罪・浄水毒物等混入罪の実行行為がなされたことにより、人の傷害・死亡の結果が発生したことにより成立します。
したがって、いわゆる結果的加重犯と言われています。
基本となる犯罪の実行行為の具体的内容については、それぞれの犯罪の説明(浄水汚染罪・水道汚染罪・浄水毒物等混入罪)をご覧いただけたらと思います。
いずれの犯罪も飲用水を汚染・毒物の混入させる犯罪であり、それらの汚染された飲用水等を飲んだ人が傷害を負ったり、死亡したりするおそれが高いことから、特に規定されたものと解されます。
そのような場合に、汚染等の行為者が、傷害や死亡の結果が発生する認識が無かったとしても、本罪により重い刑罰が科されることになります。
浄水汚染罪等を犯した者について、傷害や死亡の結果が発生することの認識(故意)があり、実際にそれらの重い結果が発生した場合に、どのような犯罪が成立するかについては、学説上の争いがあります。
傷害の結果発生の認識がある場合について、傷害罪と浄水汚染等致傷罪が成立し、両罪は観念的競合(刑法54条1項前段)になるとするのが通説的見解です。
死亡の結果発生の認識がある場合については、殺人罪と浄水汚染等致死罪が成立し、両罪は観念的競合になるとするのが通説的見解です。
この通説的見解に反対する学説は、観念的競合ではなく、牽連犯(刑法54条1項後段)であると主張しています。