附帯控訴とは、民事裁判で、第一審判決に対して控訴しなかった当事者が、相手方の控訴による控訴審において、第一審判決を自己に有利になるように取消し、変更を求める不服申立てのことです。
附帯控訴については、民事訴訟法293条1項に規定があります。
なお、刑事裁判では、旧刑事訴訟法で検察官が附帯控訴をすることが認められていましたが、現在の刑事訴訟法では認められていません。
例えば、XがYに慰謝料200万円を請求する裁判を起こしたところ、第一審判決が100万円の請求のみを認めたところ、Yは控訴したが、Xは控訴しないという事案があります。
このような場合、控訴審判決は、Yの不服申立の範囲でのみ判断をしますので、控訴審判決ではYが支払うべき金額について、0~100万円の範囲でしか判断しません。
仮に、裁判所が本当は支払われるべき慰謝料は200万円だという心証をもっていたとしても、Xが控訴していない以上、Yの控訴の当否のみが判断対象ですので、200万円を支払えという判決は出ません。Yが0円もしくは100万円より少ないと主張していることの当否のみを判断しますので、本当は200万円と思っていたとしても、とにかくYの主張は認められず控訴を棄却し、第一審判決を維持するという判決になります。
これを不利益変更禁止の原則といいます。
そこで、このときに、控訴審において、Xが附帯控訴することで、Xはやはり200万円が支払われるべきと主張することができ、控訴審判決において200万円が支払われるべきという判断が出る可能性が生じます。
本来、控訴期間は、判決書の送達を受けた日から2週間と決まっていますので、控訴するならその控訴期間にすべきという見方は一応できそうです。
しかし、附帯控訴を認めずに相手方が控訴しても控訴期間を過ぎたら一切控訴できないということにすると、Xが第一審判決の100万円について不満はあるものの、ぎりぎり納得できる、でもYが控訴するなら200万円と主張したいという気持ちの場合に、Yが控訴するかどうかの情報を何とかして得ようとし、Yが控訴すると知った途端、急いで控訴期間内に控訴をするという周到な準備をしなければならなくなります。
逆に、控訴するYの立場からすると、Yが控訴するとxが知ったら途端に控訴してくるかもしれないので、ぎりぎりまで控訴せずにしようとか、本当は控訴するつもりだが控訴しないフリをするとかの無駄な駆け引きをすることが起こり得ます。
それから、控訴した後に取り下げることができますので、とりあえず控訴しておいて、相手方が控訴しなければ取り下げるのが無難と考えることもあり得ますので、無駄な控訴が増えることにつながると思われます。
控訴する際に、自分の本心から判決に不服かどうかというだけでなく、相手方が控訴するかどうかに強い関心をはらうことになり、控訴の本来の趣旨と外れるおそれもあると思います。
そもそも、一方の当事者が控訴した場合には、いずれにしても控訴審で双方が主張を戦わせ裁判所が判断をすることから、附帯控訴を認めても、あまり大きな差異はないと思われます。
附帯控訴がある前提で控訴をした者が、相手方に附帯控訴されたことで不測の事態に陥るわけでもないと思います。
また、控訴した者は、控訴審で請求の拡張をしたり、不服の範囲を拡張したりできますので、それとの公平の点でも、附帯控訴が認められているものです。
ということで、附帯控訴が認められているものです。
加えて、XのYに対する慰謝料200万円の請求について、第一審判決が200万円全額の請求を認容したときに、Xは全額認容ですので控訴できません。
ところが、Yが控訴した場合、Xは附帯控訴をして、請求を拡張して慰謝料400万円を請求することが可能であり、そうなると、控訴審判決は0~400万円の範囲で判断することになるという判例があります。
附帯控訴は、控訴審の口頭弁論終結までであれば可能です。
附帯控訴の方法は、控訴の手続が準用されています。
控訴状は、第一審裁判所に提出しますが、附帯控訴状は控訴審裁判所に提出できます。
控訴が取り下げられたとき、または控訴が不適法で却下されたとき、附帯控訴は効力を失います。
あくまで附帯控訴は、控訴の附従的なものとされています。
ただし、附帯控訴でも、控訴の要件を備えるものは、独立した控訴とみなされ、控訴が取り下げられたりしても、効力を失いません。
これを独立附帯控訴といいます。
ですが、控訴の要件を備える場合は、附帯控訴ではなく、控訴として行われるのが通常であり、独立附帯控訴はかなり珍しいと思います。