控訴(民事裁判)

控訴とは、民事裁判において、第一審の終局判決に対する第二の事実審への不服申立てのことです。

控訴は、刑事裁判等にもほぼ同じ内容の概念がありますが、ここでは民事裁判における控訴についてご説明します。

日本では、裁判について三審制が採用されており、第一審判決で敗訴した者は不服申立てとして控訴をすることが保障されています。
控訴をすることができるのは、第一審で行った申立てが全部または一部が敗訴となった(排斥された)場合です。控訴できることを控訴権といいます。
ただし、原告被告双方が合意により控訴しないことを判決前に合意した場合には、その合意は有効であり、控訴権が発生しません。ですが、当事者の一方だけが控訴しないことの合意は、著しく不公平であることから、無効とされています。
判決後については、各当事者が控訴権を放棄することができます(民事訴訟法284条)。
加えて、判決後に、控訴権のみを放棄し、上告権は放棄しない(留保する)という飛躍上告の合意をすることができます(民事訴訟法281条1項但書)。
また、判決後、判決書(判決に代わる調書を含みます)の送達を受けた日から2週間の控訴期間を経過したときは、控訴することができず、判決が確定します。
法律上の期間については、民法140条により、期間の初日は参入しませんので、正確には、送達を受けた日の翌日から算定して2週間を経過するまで(14日目が終了して15日目の午前0時になった時点)が控訴期間となります。

控訴の方式については、控訴状を第一審裁判所に提出します(民事訴訟法286条1項)。
控訴状には、①当事者、法定代理人、②第一審判決の表示、その判決に対して控訴する旨を記載しなければなりません(民事訴訟法286条2項)。

控訴されることで、判決の確定が阻止され(確定遮断効といいます)、事件が上級裁判所で審理裁判される(移審効といいます)という効力が発生します。

控訴審の審理は、控訴によって不服申立てがあった範囲内での第一審判決の当否を対象とします(民事訴訟法296条1項)。したがって、不服申立てがない部分については、第一審の審理の対象であったとしても、控訴審の審理の対象にならないことになります。
そして、控訴審の審理については、続審主義と言われます。
これは、第一審で収集された事実及び証拠の資料に、控訴審で収集された事実及び証拠の資料を加えて、審理をやり直すということを指します。
続審主義と異なる概念として、第一審の資料だけを基礎とする制限控訴主義、控訴審の資料だけを基礎とする覆審主義があります。
そして、当事者は、控訴審において、新たな事実の主張及び証拠の提出をすることができます。このことを弁論の更新権と言います。ただし、時機に後れた攻撃防御方法として却下されることがあります(民事訴訟法297条、157条)。
基本的に、控訴をした者は、控訴状提出から50日以内に控訴理由書(不服申立ての具体的内容を記載した書面です)を提出する必要があります(民事訴訟規則182条)。

控訴審裁判所は、控訴に対し、以下のいずれかの終局判決をすることになります。
①控訴却下判決…控訴そのものが不適法な場合です。
②控訴棄却判決…第一審判決が相当な場合です。
③控訴認容判決…第一審判決が不当な場合または第一審の判決の手続が違法な場合です。
            第一審判決を取り消した上、控訴審自ら訴えの判決をするのが基本です。
            例外的に、差戻し(民事訴訟法307条,308条)や移送(民事訴訟法309条、299条)をする場合が
                             あります。

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