同時審判申出共同訴訟とは、共同被告の一方に対する訴訟の目的である権利と共同被告の他方に対する訴訟の目的である権利が法律上併存し得ない関係にある場合に、原告の申出によって、弁論及び裁判を分離しないで行われる共同訴訟のことです。
民事訴訟法41条に規定されています。
例えば、民法717条の工作物責任について、原則として土地の工作物の占有者が責任を負うが、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは占有者は免責され所有者が責任を負うことになるので(民法717条1項)、占有者の責任と所有者の責任は法律上併存し得ない関係にあることから、原告が工作物の占有者と所有者に対して工作物責任に基づく損害賠償請求の共同訴訟を提起した上、弁論と裁判を分離しないで行うことの申出をした場合が同時審判申出共同訴訟に該当します。
同時審判申出共同訴訟は、同一手続で審理・判決がされることから、裁判結果の統一をはかることができます。
特に、上記例の場合に、個別に訴訟を提起した原告は、いずれの訴訟でも敗訴する可能性があるところ、同時審判申出共同訴訟によることでいずれかには勝訴できることになります。
原告が行う同時審判の申出は、控訴審の口頭弁論の終結時までにしなければなりません(民事訴訟法41条2項)。
第1審で同時審判がされた事案で、敗訴した者が控訴し、同じ控訴裁判所に別々に訴訟が係属した場合でも、弁論と裁判は併合されることになります(民事訴訟法41条3項)。
同時審判申出共同訴訟の審理において、当事者の訴訟行為に関して通常共同訴訟と同様の取扱いがなされ、共同被告の一方の主張は他方の共同被告に影響が生じないし、共同被告の一方の控訴は他方の共同被告に影響を与えません。
和解についても、個別に成立させることができます。
また、同時審判申出共同訴訟は、いわゆる訴えの主観的予備的併合と類似するものです。
訴えの主観的予備的併合は、複数人による請求または複数人に対する請求が両立しない場合に、その複数の請求に順位を付けてその順番に従って裁判所が審判することを求める共同訴訟の形態のことです。
訴えの主観的予備的併合については、学説の多数はこれを認めていますが、判例上は認められていません。
同時審判申出共同訴訟の存在により訴えの主観的予備的併合を認める必要姓はかなり少なくなっているという見解もありますが、原告が請求に順位を付けることは同時審判申出共同訴訟では認められておらず、そのような点で訴えの主観的予備的併合の意義を認める見解もあります。