羈束力(きそくりょく)とは、民事裁判において、その事件の手続内で裁判所の裁判が他の裁判所を拘束することです。
羈束力については、民事裁判だけでなく、刑事裁判などでも問題になりますが、ここでは民事裁判での羈束力について論じます。
加えて、一般的には、羈束力は、国家機関の行為がそれ自身または第三者の行動に制限を加える効力のこととして使われることもあります。
羈束力に関して、以前は自己拘束力も羈束力の一つとされていましたが、今は自己拘束力は羈束力とは別とされています。
羈束力の具体例として、確定した移送の裁判は移送を受けた裁判所を拘束して、元の裁判所へ返送することができないこと(民事訴訟法22条1項)があります。
また、事実審(高等裁判所の場合が多いです)の判決における事実認定は、上告審(法律審。最高裁判所の場合が多いです)を拘束すること(民事訴訟法321条1項)も、羈束力の一つとされます。事実レベルの争いは、基本的に高等裁判所までであり、最高裁判所では事実の争いが覆らないとされているのです。最高裁判所は基本的に法律的な争点のみ対象となります。
それから、上級審において原判決の取消または破棄の事由となった上級審の判断が移送・差戻後の下級審を拘束すること(裁判所法4条、民事訴訟法325条3項)も、羈束力です。