擬制自白とは、民事訴訟において、当事者が口頭弁論または弁論準備手続で相手方が主張した事実を争うことを明らかにしない場合に、この事実を自白したものとみなすことです。
相手方が主張した事実を争うことを明らかにしない場合には、争う意思がないものと解することができることから、民事訴訟法159条1項本文において口頭弁論の場合の擬制自白が規定され、同法170条5項は同法159条1項を弁論準備手続の場合に準用する旨規定しています。
相手方が主張した事実を直ちに争わなかったからといって、すぐに擬制自白が成立するわけではありません。
つまり、擬制自白の成否は、口頭弁論終結時(判決の直前)において、当事者が争うことを明らかにしたかどうかによって判断されるものですので、それまでの間に争う意思を明らかにすれば擬制自白は成立しません。
また、弁論の全趣旨により、その事実を争ったと認めるべき場合は、擬制自白は成立しません(民事訴訟法159条1項但書)。
ただし、あまりに遅い段階で、はじめて争う意思を明らかにしたような場合は、その主張が民事訴訟法157条により、時機に遅れた攻撃防御方法であるとして却下されることがあります。その場合には、擬制自白が成立することになります。
加えて、当事者が口頭弁論に出頭しない場合にも、擬制自白が成立します(民事訴訟法159条3項本文)。
したがって、裁判が起こされ、訴状が被告に送達されて、指定された第1回口頭弁論期日が開かれたにもかかわらず、被告が答弁書も一切出さずに期日に出頭しなかった場合には、訴状記載の事実について被告の擬制自白が成立し、即日弁論が終結して、被告敗訴判決が出る場合があります。
したがって、裁判を起こされた被告は、そのようにならないよう注意が必要です。
このような期日欠席の擬制自白は、公示送達による呼出の場合には認められません(民事訴訟法159条3項但書)。
それから、擬制自白は、弁論主義が前提となっています。
離婚訴訟などのいわゆる人事訴訟については、人事訴訟法19条1項で、擬制自白に関する民事訴訟法159条1項を適用しないことが規定されています。
したがって、離婚訴訟などの人事訴訟では、擬制自白は成立しません。
ですが、離婚訴訟でも、被告が裁判所に全く出頭しなくても大丈夫なわけではなく、原告の言い分や証拠だけでもそれが合理的と認められれば、被告敗訴の判決が出ることになります。
実務上は、被告欠席の離婚訴訟の場合、原告の陳述書や原告本人尋問を行った上、余程のことがない限り被告敗訴の判決が出るようです。
ですから、やはり裁判に全く出席しないというのは、ほぼ敗訴を意味する危険な行為と言わざるを得ないと思います。
以上のように、裁判で訴えられた場合それを放置して期日を欠席すると裁判に負けるというのは、この擬制自白の制度によるものなのです。