株券とは、株式(株式会社の株主としての地位)を表す有価証券のことです。
株主としての地位というのは、それ自体が形になっておらず目に見えないところ、株主に対して証券を発行することで、株主としての地位が第三者にも分かりやすくなり、特に株式を取引の対象にすることがしやすくなる効果があります。
ですが、現代では、株式の取引は、特に上場会社について、インターネットなどで行われるのが主流となっていますので、株券の存在自体が過去の遺物になっていると言えると思います。
したがって、今は株券を発行しないのが一般的ですが、今もなお株券を発行することも可能です。
株券についての会社法の規定としては、株券を発行する場合は株券を発行する旨を定款で定めることが必要となっています(会社法214条)。
この規定は、会社法制定時にそれまでの旧商法の規定から変更されたものです。
旧商法では、定款で株券を発行しない旨を定めた場合にだけ株券を発行しないことができたという逆の規定になっていました(旧商法227条1項)。
そこで、会社法制定前からある株式会社については、定款に株券を発行しないという定めがないかぎり、株券を発行する旨の定款の規定があるものとみなされることになっています(会社法整備法76条4項)。
株券に記載される事項は、以下の事項です。
①株券であること
②株券番号(会社法216条本文)
③株券発行会社の商号(会社法216条1号)
④株式の数(会社法216条2号)
⑤譲渡制限株式の場合はその旨の記載(会社法216条3号)
⑥種類株式発行会社の場合は株式の種類・内容(会社法216条4号)
⑦代表取締役の記名押印(署名)
株券が発行されている場合、株式の譲渡・質入れは、株券を交付することによって行います(会社法128条1項、146条2項)。
また、株券不所持制度というものがあり、株券が発行されている場合でも、株主は、会社に対して、株券の所持を希望しないことを申し出て、株券を会社に返却することができます(会社法217条1項、2項)。
株券は株式譲渡の際に必要となりますが、株式を譲渡する予定がない場合には、株券を紛失するリスクを考えたときに、株券を会社に返却することで紛失のリスクをなくすことができるということです。