競業避止義務とは、会社法上の取締役の義務の一つであり、取締役が自己または第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をするには、重要な事実を開示したうえ、株主総会または取締役会の事前の承認を得ることが必要とされていることです(会社法356条1項1号、365条1項)。
取締役会設置会社以外の会社では、株主総会の承認が必要であり、取締役会設置会社では取締役会の承認が必要です。
取締役に対して競業避止義務が課された趣旨は、取締役は事業の重要な情報を取得することが容易であり、取締役が競業取引を行うことによって、会社が取引先や取引の機会を失うという大きな損害を被り、取締役が不当な利益を取得することになってしまうことを防止するためと言われています。
また、取締役がこの義務に違反したときには、①取締役には損害賠償責任が発生し(会社法423条1、2項)、②取締役解任の正当事由になり得るものです(339条)。
この競業避止義務は、取締役として在任中に発生するものですので、取締役退任後の競業は原則として自由と解されています。そのため、会社と取締役との間で、退任後も競業避止義務を課す特約や念書を交わすことがありますが、憲法上職業選択の自由が保障されていることもあり、退任後の競業避止義務を課する特約などは、地域や期間を制限しているなどの一定の場合に有効とされ、無制限に退任後の競業避止義務を課すものは無効とされる可能性が高いです。