監護者性交等罪

監護者性交等罪とは、18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者監護者性交等罪.jpg
であることによる影響力があることに乗じて性交等をする犯罪です。
監護者性交等罪については、刑法179条2項に規定されています。
同罪の刑事罰は、5年以上の有期(20年以下)懲役とされています。

監護者性交等罪は、平成29年に行われた刑法の一部改正により新設されました。
このときに強姦罪がなくなり、強制性交等罪が新設されて、非親告罪となり、厳罰化されています。

元々、18歳未満の者との性交等については、旧強姦罪(強制性交等罪)が成立しない場合でも、処罰対象となっていました。
その一つが、各都道府県にある青少年保護条例での淫行の処罰です。これは、加害者が親や教師のような者である必要はなく、広く処罰対象となっています。
さらに、児童福祉法においても、淫行について処罰対象となっており、これは親・義親や教師のような関係にある者が性交または性交類似行為を行った場合に処罰されるものと考えられています。
そして、監護者性交等罪が新たに設けられたものです。
わざわざ監護者性交等罪が設けられたのは、児童福祉法違反の刑事罰は10年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金または併科するものと規定されているところ、親子関係のような監護者の関係に乗じた場合については、強制性交等罪と同様の重い刑罰を科すべきとされたのだと思います。

監護者性交等罪は、①現に監護する者が、②18歳未満の者に対し、③監護者であることによる影響力があることに乗じて、④性交等をしたことによって犯罪となります。

現に監護する者とは、親や義親等のように生活全般にわたった保護・被保護、依存・被依存の関係にある者のことです。
児童福祉法違反と異なり、教師や塾講師は、被害者と同居している等の特殊な事情がないかぎり、本罪は成立しないと思われます。

②被害者が18歳未満である場合のみ成立します。
監護者は、被害者が18歳未満であることを知っていることが必要ですが、通常は知っているものと推測されると思います。

監護者であることによる影響力に乗じたことが必要とされています。
この要件は、曖昧さがあります。
この要件を広く解すれば、実際上、監護者が18歳未満の者と性交等をすれば常に本罪が成立することになり、要件として機能しない解釈もあり得ると思われます。
具体的には、被害者側が真摯な恋愛感情で積極的に性交等をした場合にも本罪が成立するかどうかというのが一番の問題だと思われます。
このような場合にも本罪が成立するとの見解もあり、この見解によれば、要件としてほとんど機能しないことになりそうです。
今後裁判例が集積されることで、内容が確定していくものと思います。

性交等とは、性交・肛門性交・口腔性交のことです。
淫行は、相手に自慰行為をさせること等を含むため、より広い概念になります。
したがって、監護者性交等罪が成立しない場合に、青少年保護条例や児童福祉法の淫行罪に成立することがあり得ます。

本罪は、未遂犯も処罰されます(刑法180条)。

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