児童買春勧誘罪とは、児童買春の周旋をする目的で、人に児童買春をするように勧誘した者に成立する犯罪のことです。
児童買春勧誘罪は、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律において、刑事罰が科される旨規定されています。
児童買春勧誘罪の刑事罰は、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金とされています。
業として児童買春勧誘罪を犯した場合は、刑事罰が加重され、7年以下の懲役及び1000万円以下の罰金が科されます。
児童買春勧誘罪において、児童買春とは、18歳未満の男女である児童・児童の保護者・児童を支配下に置いている者・児童に対する性交等の周旋をした者に対し対価の供与またはその約束の上、児童に、性交、性交類似行為、自己の性的好奇心を満たす目的で児童の性器・肛門・乳首を触り、または児童に自己の性器等を触らせる行為をすることです。
本罪は、人に児童買春を勧誘する行為が対象となっていますので、勧誘する相手は、売春をする児童ではなく、買春をする側の者(多くは成人男性)です。
したがって、児童買春をしようとする者が、児童に対し、買春(援助交際)を勧誘する行為は、本罪の対象ではありません。
また、本罪は、児童買春の周旋をする目的が必要な目的犯です。
児童買春の周旋とは、児童買春について、買春者と児童との仲介をする行為のことです。
一般的には、そのようなことをする者は、仲介によって利益を得る目的のことが多いと思われます。
ただ、利益を得る目的は犯罪成立の要件ではありません。
また、児童が、自ら売春(援助交際)をする目的で、その相手を勧誘する行為は、本罪の対象外です。
そもそも、児童が、自ら売春する行為は、自らが利益を得る目的であったとしても、犯罪として処罰されません。
本罪の勧誘とは、人に児童買春をすることを決意させようとする行為です。
実際に、勧誘を受けた人が児童買春をしたことや児童買春をしようと決意したことは、本罪成立の要件ではないと思われます。
その点で、勧誘行為があった時点で、本罪は既遂犯として成立します。
本罪に関し、児童を使用する者は、児童が18歳未満であることを知らないことを理由として処罰を免れることができないが、18歳未満であることを知らないことについて過失がないときは処罰を免れる旨の規定があります。
児童を使用する者とは、例えば、売春クラブの経営者が児童を売春婦として雇っていた場合が該当します。
それから、児童買春勧誘罪を業として行った者については、通常より重い刑罰が科されます。
業として行ったといえるのは、社会生活上、反復継続して行う意思があった場合と思われます。
典型的なのは、売春クラブを経営していた場合です。
また、法人の代表者・法人または人の代理人・使用人・その他の従業者が、その法人または人の業務に関し、児童買春勧誘罪を犯したときは、行為者を罰するほか、その法人または人に対し、罰金刑が科されます。
売春クラブを法人の事業として行っていた場合は、その代表者や従業員のような関係者個人だけでなく、法人も処罰されるということです。
また、個人事業としてデリヘルが行われていたなかで、個人事業主であるオーナーの知らないところで、従業員が児童を雇い、児童買春勧誘罪を犯した場合は、そのオーナーに罰金刑が科されることになると思います。
ただし、法人やオーナーが、従業員の児童買春勧誘罪について無過失といえる場合には、処罰されないというのが判例です。
このような規定を両罰規定といいます。