準強制性交等罪とは、人の心神喪失・抗拒不能に乗じ、または心神を
喪失させ、もしくは抗拒不能にさせて、性交・肛門性交・口腔性交をする犯罪のことです。
準強制性交等罪は、刑法178条2項に規定されています。
準強制性交等罪の刑事罰は、強制性交等罪と同じであり、5年以上20年以下の有期懲役です。
準強制性交等罪は、平成29年に制定された刑法の一部を改正する法律によって、以前の準強姦罪に代わることになった犯罪です。
準強姦罪(3年以上の有期懲役)よりも、刑事罰が重くなり、成立範囲も広がっています。
刑法の一部を改正する法律は、平成29年7月13日に施行されました。
今後、準強姦罪ではなく、準強制性交等罪が適用されることになります。
ただし、施行前に行われた行為については、準強制性交等罪ではなく、準強姦罪の適用を受けます。強制性交等罪は、施行前に遡って適用されないということです。
準強制性交等罪の実行行為は、心神喪失・抗拒不能に乗じ、または心神喪失・抗拒不能にさせるという基本的な点で、準強姦罪から変更はありません。
心神喪失は、精神障害や意識障害等のため、自己に対する性交等の行為について正常な判断ができない状態と解されます。
精神障害により6~7歳程度の知能しか有しない25歳の女性について、心神喪失と判断された裁判例があります。
意識障害により正常な判断ができない状態としては、泥酔状態の場合があります。
なお、心神喪失について、犯罪を犯す者の責任能力の場合に用いられる心神喪失と、準強制性交等罪の心神喪失とは内容が異なると考えられています。
抗拒不能は、自己に対する性交等の行為に対し、物理的・心理的に抵抗できない、著しく抵抗が困難な状態と解されます。
(旧)準強姦罪の裁判例ですが、深夜に夢うつつの女性が、侵入してきた他人を情夫と間違えているのに乗じて姦淫行為がされた事案について、(旧)準強姦罪の成立を認めたものがあります。
また、医師が女性患者に対し、陰部に薬を挿入すると偽って、目を閉じさせるて姦淫した事案で、(旧)準強姦罪の成立を認めた裁判例もあります。
準強制性交等罪は、自らの行為で心神喪失・抗拒不能の状態を作り出した場合だけでなく、既に心神喪失・抗拒不能の状態にあるのを利用した場合でも成立します。
本罪は、準強姦罪では被害者が女性に限定され、加害者が男性に限定されていたのに対し、そのような限定がなくなりました。
対象となる行為も、性交だけでなく、肛門性交、口腔性交という行為も含まれることになりました。
以前は、準強姦罪に該当しない場合、準強制わいせつ罪の適用を受けていました。
準強制性交等罪は、未遂犯も処罰されます。
準強制性交等罪は、準強姦罪と異なり、親告罪ではありません。
したがって、被害者等の告訴がなくても、検察官は起訴することができます。
以前、親告罪であったことから、大きな変更ですので、実務上の運用がどのようになるのか、その推移が注目されています。