国選弁護人とは、刑事事件において、国が被疑者や被告人のために選任する
弁護人のことです。
これに対し、私選弁護人は被疑者や被告人などが自分で弁護人を選任します。
国選弁護人については、被告人段階での国選弁護人と、被疑者段階での国選弁護人とで、取扱いが異なっています。
被告人段階について被告人国選といい、被疑者段階について被疑者国選といいます。
以前は、国選弁護人については、被告人国選しか認められていませんでした。
つまり、起訴後の裁判になってはじめて、国選弁護人が選任されたのでした。
これに関し、日本国憲法37条3項において、「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を選任することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。」と規定されています。
このように、憲法では、被告人に国選弁護人がつくことが保障されていることを受け、実際上も被告人段階での国選弁護人しか認められていませんでした。
平成16年の刑事訴訟法改正により被疑者段階の国選弁護人が一定の要件の下で認められることになりました。
これは、一連の司法改革の流れのなかでの改正です。
このとき、法テラス(日本司法支援センター)が、総合法律支援法の制定に基づいて設置され、この法テラスが国選弁護人の選任に関する業務を行うことになりました。
国選弁護人は、私選弁護人の場合と任務や権限は基本的に変わりません。
国選弁護人は、弁護士の中から選任されなければならないことになっています(刑事訴訟法38条1項)。
私選弁護人は、弁護士資格をもっていない特別弁護人が認められる場合があります。
ただ、国選弁護人は、原則として1名です。
私選弁護人は、被疑者や被告人が自己の費用で選任するので、複数の選任が可能です。
国選弁護人においても、重大事件などの場合に、裁判官が特に必要があると認めるときは、職権でさらに弁護人1人を付することができると規定されています(刑事訴訟法37条の5)。
国選弁護人の選任方法は、大きく2つに分かれます。
1つは、被疑者・被告人が請求する場合です。
もう1つは、裁判官が職権で付する場合です。
当然、前者の場合が多いですが、被疑者・被告人が求めていない場合でも、裁判官が職権で国選弁護人を付する場合があります。
国選弁護人は、一旦、当該事件の弁護人になってしまうと、自由に辞めることができません。
その点で、私選弁護人と異なります。
国選弁護人は、裁判所が一定の要件を満たすと認めて解任をしないかぎり、任務を解かれないのです。
国選弁護人の報酬などについては、金額の基準が決まっています。
通常の私選弁護人の費用より低い金額です。
それを法テラスが国選弁護人に支払います。
それは、訴訟費用という取扱いになり、被疑者国選でも被告人国選でも裁判所の判断で当該被疑者・被告人に全部または一部の負担が命じられることがあります。