私選弁護人とは、刑事事件において、被疑者・被告人などが自
ら選任する弁護人のことです。
私選弁護人については、刑事訴訟法(特に30条以下)などに規定があります。
まず、被告人・被疑者は、いつでも私選弁護人を選任することができます(刑事訴訟法30条1項)。
被告人・被疑者の配偶者、直系の親族、兄弟姉妹、法定代理人、保佐人は、独立して、私選弁護人を選任することができます(同条2項)。
直系の親族とは、祖父母、父母、子、孫、ひ孫、曾祖父母などです。
法定代理人とは、法律の規定により(本人の意思とは無関係に)代理権が与えられる代理人のことであり、成年後見人、未成年後見人などのことです。
未成年者の親権者は、法定代理人ですが、直系の親族に含まれるものと思われます。
これらの者は、「独立して」私選弁護人を選任できると規定されているため、被疑者・被告人本人の意思に反しても選任できるということになります。
ただし、被疑者・被告人本人は、親族などが選任した私選弁護人が気に入らなければ、自由に解任することができます。
弁護人は、あくまで被疑者・被告人の弁護のためであり、被疑者・被告人本人との信頼関係が重要だからです。
私選弁護人になることができるのは、基本的に、弁護士だけです(刑事訴訟法31条1項)。
ただし、簡易裁判所・地方裁判所における第1審については、裁判所の許可を得られれば、弁護士以外の者を私選弁護人に選任することができます(同条2項)。
このような弁護士ではない弁護人を特別弁護人といいます。
特別弁護人が認められるかどうかは、裁判所の裁量とされています。
私選弁護人の選任の手続については、被告人の場合、被告人と弁護人が連署した弁護人選任届を裁判所に差し出して行うことになっています。
被疑者段階の場合については、法令で定まっていませんが、通常、被疑者と弁護人が連署した弁護人選任届を検察庁・警察に提出して行われます。
弁護人の人数について、被疑者の場合は原則として3名までと決まっています(刑事訴訟規則27条1項本文)。
ただし、裁判所が特別の事情があるものと認めて許可した場合は、3名を越えることが認められます(同項但し書き)。
被告人の弁護人については、原則として人数制限はありませんが、裁判所が特別の事情があるときに、弁護人を3人までに制限することができます(刑事訴訟規則26条1項)。
被告人に複数の弁護人がいる場合、そのうちの1人を主任弁護人として定めることが必要です(刑事訴訟法33条)。
私選弁護人の選任は、裁判の段階の場合、審級ごとになります(刑事訴訟法32条2項)。
つまり、第1審で選任された私選弁護人は、第1審の終了と共に、私選弁護人ではなくなるということです。
第2審になった場合には、また弁護人の選任の手続が新たに必要になります。
もちろん、第1審の私選弁護人が、第2審も私選弁護人に選任されることは可能です。
ただし、通常、追加の弁護士費用がかかります。