罪刑法定主義とは、どのような行為が犯罪として処罰されるか、どのような刑罰が科されるかについて、あらかじめ法律で規定しなければならないという原則のことです。
「法律なくば犯罪なく、法律なくば刑罰なし」ともいいます。
近代刑法学の父といわれているフォイエルバッハというドイツの刑法学者が、罪刑法定主義をはじめて明確に提唱したといわれています。
中世・封建時代においては、どのような行為が犯罪として処罰されるか、どのような刑罰が科されるかについて、あらかじめ法律で規定されていなくても、国家権力が専断的に処理することができたといわれています。
それでは、王様は、自分の気に入らない者を適当な理由をつけて刑務所送りにすることができてしまうことになりかねません。
そこで、あらかじめ犯罪と刑罰について法律で規定することを必要とする罪刑法定主義が唱えられました。
なお、イギリスのマグナ・カルタ(13世紀)においては、適法な裁判により、国の法律によらなければ処罰されないという規定があり、その精神がイギリス、アメリカなどに受け継がれたといわれています。
罪刑法定主義は、近代刑法の大原則とされています。
わが国においては、罪刑法定主義を明確に規定したものはありませんが、日本国憲法31条が、「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」と規定しており、この31条が罪刑法定主義をも規定していると一般に解釈されています。
罪刑法定主義は、「法律なくば犯罪なく、法律なくば刑罰なし」というだけでなく、以下の派生原理を含むといわれています。
①慣習刑法の排除
②遡及処罰の禁止
③類推解釈の禁止
④絶対的不定期刑の禁止
⑤明確性の原則
⑥過度の広汎性の理論