共同正犯とは、2人以上共同して犯罪を実行した者のことです。
共同正犯については、刑法60条で、「2人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。」と規定されています。
共同正犯は、共犯(2人以上の者が共同して犯罪を実現すること)の1つです。
共犯の種類として、一般に、共同正犯、教唆犯、幇助犯が挙げられます。
このうち、一般の人がイメージされる共犯に近いのは、共同正犯だと思われます。
例えば、ルパン三世が、次元と五右衛門と一緒に泥棒をした場合、3名ともが窃盗罪の共同正犯ということになります。
通常の共同正犯の要件、つまり、「2人以上共同して犯罪を実行した」と該当するためには、①2人以上の者が実行行為を一部でも分担すること、②それらの者の間で意思の連絡があることが必要と解釈されます。
①実行行為の分担については、厳密な実行行為の分担までは必要ないと考えられています。
例えば、見張りをしていただけの者であっても、実行行為の分担が認められ、共同正犯が認められる場合があります。
②意思の連絡については、共同正犯者の間において互いに共同で犯罪を実行することについて認識が必要です。
したがって、共同して犯罪を実行する意思が片方の者にしかない場合、これを片面的共同正犯といいますが、意思の連絡が認められないことから、共同正犯として処罰できません。
意思の連絡については、犯罪を実行する前の時点であっても構わないですし、まさに犯罪を行おうとする現場でも認められます。
また、明確な意思表示の形式をとる必要はなく、暗黙の了解でも構わないと考えられています。
共同正犯が成立するためには、元々、犯罪の実行行為の一部を実行することが絶対必要であると考えられてきました。
しかし、判例が、実行行為はせずに、共謀に参加しただけの者であっても、他人の行為を自己の手段として犯罪を行ったとして、共同正犯の成立を認めました。
このように、共謀に参加しただけでも、実際に他の共謀者によって犯罪が実行された場合に、共同正犯として認められるものを共謀共同正犯といいます。
当初、多くの学説は、犯罪の実行をしていない共謀共同正犯を認めることに否定的でしたが、最近では共謀共同正犯を肯定するのが通説です。
その理由として、実際に自ら手出しをしない首謀者のようなものを正犯として処罰すべきであること等があります。
例えば、地下鉄サリン事件などの首謀者とされる麻原彰晃(本名松本智津夫)のように、正犯として処罰されるべき場合があります。
共謀共同正犯を否定すると、自ら手を出さない麻原彰晃のような者については、教唆犯が成立するに過ぎないことになります。