死刑とは、犯罪者の生命を剥奪する刑罰です。
死刑については、刑法11条1項で、刑事施設内において、絞首して執行すると規定されています。
また、刑法11条2項では、死刑の言渡しを受けた者は、その執行に至るまで刑事施設に拘置すると規定されています。
死刑は、当然ですが、最も重い刑罰です。
歴史的には、わが国でも、火あぶり、はりつけ等の方法がとられていましたが、明らかに残虐な方法は避けられ、現在のわが国では絞首刑のみとなっています。
具体的には、死刑囚の首に縄をかけて、死刑囚の立つ床が抜けることで、死亡します。
その場合、必ずしも気管の閉塞による窒息死ではなく、頸動静脈の圧迫で脳への血流が遮断されて酸欠状態となり、脳細胞が死滅して心臓停止する場合などがあるようです。
したがって、厳密には、首を絞めているのではないということで、縊首(いしゅ)と言われます。
死刑が科され得るのは、内乱罪、外患誘致罪、外患援助罪、現住建造物等放火罪、激発物破裂罪、現住建造物等浸害罪、汽車(艦船)転覆等致死罪、往来危険による汽車(艦船)転覆等罪、水道毒物混入致死罪、殺人罪、強盗致死(殺人)罪、強盗強姦致死罪などです。
死刑の執行については、さらに刑事訴訟法に規定があります。
死刑の執行は、法務大臣の命令によって行われます(刑事訴訟法475条1項)。
法務大臣が死刑の執行を命じたときは、5日以内にその執行をしなければなりません(刑事訴訟法476条)。
法務大臣の命令は、判決確定の日から6か月以内にしなければならないと規定されています(刑事訴訟法475条2項)。ただし、再審の請求などが出てその手続が終了するまでの期間や共同被告人であった者に対する判決が確定するまでの期間は算入しません(同項但書)。
この点、一般的に、死刑執行は、判決確定から長期間経過することが多く、まず6か月以内に出ることがありません。
東京地裁平成10年3月20日は、死刑囚が死刑執行命令が判決確定後6か月以内に出ないのは違法だとして訴えた裁判において、刑事訴訟法475条2項は、法的拘束力のない訓示規定であるとして、違法ではないとしました。
この裁判を起こした死刑囚は、死刑の執行に至るまで死の恐怖が継続するから、死刑確定者にとって速やかに刑の執行を受けることが利益だなどと主張していました。
また、死刑は、検察官、検察事務官及び刑事施設の長またはその代理者の立会いの上、執行しなければならないと規定されています(刑事訴訟法477条)。
死刑の執行の立会いは、検察官、検察事務官などの職務の1つです。
したがって、死刑執行場所には、検察官などの立会人が死刑の様子を見ることができるガラス窓で仕切られた立会室があります。
以前は、死刑執行場所について公にされていませんでしたが、平成22年に初めて報道陣に公開されました。
公開された死刑執行場所には、まず死刑囚が連れて行かれる教誨(きょうかい)室があり、そこのソファで自分の身柄(遺体)や荷物の処理について説明を受け、また仏壇もあり、仏教、キリスト教などの教誨師と話をすることができるようです。
次に、前室に連れて行かれ、そこにも仏壇があります。前室で、拘置所長から、正式に死刑執行の告知を受けます。
この前室で、目隠しをされ、手錠をかけられます。
その後、カーテンが開かれ、隣りにある執行室に連れて行かれます。
執行室にある約1メートル四方の踏み台(床と同じ高さ)に立たされ、真上の天井に設置された滑車を通された縄を首にかけられます。
執行室の隣りに、ボタン室があります。ボタンは3個あります。
3名の刑務官がボタンの前に立ち、一斉にボタンを押します。
どのボタンが踏み台とつながっているかは分からない仕組みになっていますが、ボタンが押されたことで踏み台が開き、死刑囚の身体は落下して死亡します。
死亡の確認は、踏み台が開いた下にある地下室で、医務官によって行われます。
死刑執行の様子については、執行室とガラスで仕切られた立会室から検察官などが確認するのです。
死刑の執行に立ち会った検察事務官は、執行始末書を作り、検察官及び刑事施設の長またはその代理者と共に、これに署名押印します(刑事訴訟法478条)。