名誉毀損罪とは、公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損する犯罪
です。
名誉毀損罪は、刑法230条1項に規定されています。
名誉毀損罪の刑事罰は、3年以下の懲役もしくは禁固または50万円以下の罰金です。
名誉毀損罪が保護しようとしている名誉とは、何であるかという問題があります。
名誉は、以下のように種類があると言われています。
①内部的名誉:人からの評価とは独立のその者の客観的価値。
②外部的名誉:人・社会からの評価。
③名誉感情:本人が自分自身に対して持っている価値意識。
このうち名誉棄損罪が保護しようとしているのは、②外部的名誉とするのが通説的見解です。
①内部的名誉は、人からの評価に左右されませんので、保護の対象になりません。
また、名誉毀損罪は公然と事実を摘示することが必要とされていますので、刑法は本人自身の評価ではなく、社会的評価を対象としていると考えられます。
公然とは、不特定または多数の者が認識できる状態のことです。
インターネットで記載すれば、不特定かつ多数の者が認識できる状態であり、当然に公然性が認められると思われます。
公然性が問題になった事案において、最高裁決定昭和34年2月19日は、検察官・検察事務官・被害者の面前だった場合に、公然とはいえないものと判示しました。
ただし、判例は、直接に名誉毀損することを伝えたのが特定かつ少数の者であっても、そこから伝播して不特定または多数が認識できる状態になるのであれば、公然性を認める傾向があると言われています。
事実を摘示とは、人の社会的評価を害するに足りる事実を示すことです。
例えば、「○○さんは、不倫している」と大勢に言うことです。
本当に不倫していても、本当は不倫していなくても、いずれにしても名誉毀損罪に該当します。
つまり、本当のことを言っても、名誉棄損罪に該当します。
かなり例外的に、真実であることを証明した場合に、名誉毀損罪にならない場合があります。
事実を摘示しないで、人の社会的評価を害することを言うと、侮辱罪になります。
例えば、「あんぽんたん!」、「給料泥棒!」などです。
名誉毀損罪の対象となる「人」は、自然人だけでなく、法人も含まれます。
ただし、神奈川県民とか、韓国人のように、特定性が低い場合には、それらの者の社会的評価を害する事実を摘示したとしても、本罪の問題にはなりません。
それから、条文上、「名誉を毀損した」と規定されていますが、実際にその人の社会的評価が低下したことは必要ありません。
なぜなら、実際にその人の社会的評価が低下したかどうかは立証困難だからです。
つまり、人の社会的評価を害するおそれのある事実が公然と摘示されれば、名誉棄損罪が成立するのです。
名誉毀損罪は、親告罪ですので、公訴提起のために被害者等の告訴が必要です。
また、本罪については、名誉権と表現の自由との調和のため、真実性の証明による不処罰というものが刑法230条の2において認められています。