営利目的被略取者引渡し等罪とは
営利目的被略取者引渡し等罪とは、営利の目的で、略取・誘拐・売買された者を引き渡し、収受し、輸送し、蔵匿する犯罪です。
営利目的被略取者引渡し等罪は、刑法227条3項に規定されています。
これらの犯罪の刑事罰は、6月以上7年以下の懲役となっています。
本罪は、被略取者引渡し等罪と似ています。
どちらの犯罪も、目的犯です。
大きな違いは、被略取者引渡し等罪が略取罪等の犯人を幇助(手助け)する目的の場合に認められるのに対し、本罪は営利目的のように他人を手助けするのではなく自ら犯行を行う目的があることが必要です。
それから、被略取者引渡し等罪は、隠避した場合にも認められるところ、隠避した場合では本罪は成立しません。
また、本罪と似ているもので、身代金目的被略取者収受罪があります。
これは、身代金を得る目的で略取・誘拐の被害者を収受する犯罪で、本罪より重く処罰されるものです。
営利の目的とは、自らが財産上の利益を得る目的、または第三者に財産上の利益を得させる目的のことです。
略取とは、暴行・脅迫を手段として、人を生活環境から不法に離脱させ、自己・第三者の事実的支配化におくことです。
誘拐とは、欺罔・誘惑を手段とし、人を生活環境から不法に離脱させ、自己・第三者の事実的支配化におくことです。
売買とは、人身売買のことです。対価に支払によって、人に対する事実的支配を授受することです。
「引き渡し」とは、被害者の支配を他の者に受け渡すことです。
「収受し」とは、被害者の支配を引き受けることです。
「輸送し」とは、被害者を場所的に移動させることです。
「蔵匿した」とは、被害者が発見されるのを妨げる場所を提供することです。
本罪は、未遂も処罰されます(刑法228条)。
わいせつ目的被略取者引渡し等罪とは
わいせつ目的被略取者引渡し等罪とは、わいせつの目的で、略取・誘拐・売買された者を引き渡し、収受し、輸送し、蔵匿する犯罪です。
営利目的被略取者引渡し等罪と同じ、刑法227条3項に規定されており、刑罰も同じです。
わいせつの目的とは、、強姦や強制わいせつなどの性的行為をする目的のことです。
この目的だけ異なり、それ以外の要件は、営利目的被略取者引渡し等罪と同様です。
ただし、わいせつ目的被略取者引渡し等罪だけが親告罪であり、被害者等の告訴がなければ刑罰が科されません。
なお、結婚目的略取罪、結婚目的誘拐罪はありますが、結婚目的で略取者などを引き渡しても犯罪になっていません。
生命身体加害目的被略取者引渡し等罪とは
生命身体加害目的被略取者引渡し等罪とは、生命・身体に対する加害の目的で、略取・誘拐・売買された者を引き渡し、収受し、輸送し、蔵匿する犯罪です。
わいせつ目的被略取者引渡し等罪と同じように、刑法227条3項に規定されており、刑罰も同じです。
生命・身体に対する加害の目的とは、自らが被害者を殺害・傷害・暴行する目的、または第三者に被害者を殺害・傷害・暴行させる目的のことです。
被害者から臓器摘出目的がある場合も含まれるものと思われます。
この目的以外の要件は、営利目的被略取者引渡し等罪と同じです。