結婚目的買受け罪とは、結婚の目的で、人を買い受ける犯
罪のことです。
結婚目的買受け罪の規定は、刑法226条の2第3項にあります。
本罪の刑事罰は、1年以上10年以下の懲役となっています。
結婚目的買受け罪は、人身売買の罪の1つとして、平成17年刑法一部改正により新たに設けられた犯罪です。
結婚目的については、自分が被害者と結婚することを目的としている場合だけでなく、第三者と被害者を結婚させる目的がある場合も含みます。
この場合の結婚とは、法律上の婚姻、つまり戸籍上の婚姻の届出をする場合が該当します。
さらに、戸籍上の届出は行わない、事実婚すなわち内縁を含むかどうかについては学説上の争いがあります。
この点について、刑法の別の規定との表現の違いを指摘する説があります。
つまり重婚罪においては、配偶者のある者が重ねて「婚姻」をしたときは、2年以下の懲役に処すると規定されており、「婚姻」という言葉になっています。
重婚罪では、重ねて「婚姻」をしたとは、戸籍上の婚姻の届出をする場合の法律上の婚姻を重ねて行うことを指します。事実婚(内縁)は含みません。
このように、刑法では、婚姻と結婚という言葉を使い分けていると解釈できます。
そうしますと、結婚目的買受け罪の「結婚」とは、法律上の婚姻だけでなく、事実婚(内縁)を含むと解することができ、そのような見解が通説となっています。
また、同居を前提としたとしても、夫婦関係の実質はなく、単なる肉体関係を結ぶ目的があるに過ぎない場合には、結婚目的買受け罪ではなく、わいせつ目的買受け罪に該当すると思われます。
買い受けるとは、対価を支払って、現実に人身に対する不法な支配の引渡しを受けることです。
ここでいう対価については、金銭だけでなく、サービスの提供などの経済的利益を含みます。
人身を交換する場合を含むかについては、争いがありますが、そのような行為も処罰すべきと思われます。
それから、売買の契約をするだけでなく、契約の履行として被害者への不法な支配の引渡しを受けることで、「買い受けた」に該当し、本罪の既遂となります。
結婚目的買受け罪は、未遂犯も処罰されます(刑法228条)。
人身売買の申込みがなされたが、人身の支配の引渡しを受けることができなかった場合に未遂犯となります。