身代金要求罪とは、人を略取または誘拐した者が、近親者その他略取または誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じて、その財物を交付させ、または要求する行為をする犯罪です。
身代金要求罪は、刑法225条の2第2項において規定されております。
身代金要求罪の刑事罰は、無期または3年以上の懲役です。
これは、身代金目的略取罪、身代金目的誘拐罪と同じ刑事罰です。
本罪は、昭和39年の刑法一部改正で追加されました。
このころに身代金目的の誘拐が社会問題化していたことを受けたものです。
本罪が新設されるまでは、身代金の要求は、恐喝罪によって処理されていました。
身代金要求罪の主体となる者は、人を略取または誘拐した者です。
略取とは、暴行・脅迫によって、人を生活環境から不法に離脱させ、自己等の事実的・実力的支配化におくことです。
誘拐は、欺罔・誘惑による場合です。
身代金目的略取罪、身代金目的誘拐罪を犯した者は、もちろん本罪の主体になり得ます。
したがって、身代金目的誘拐罪を犯した者が、さらに身代金要求罪を犯した場合、両罪が成立した上で、両罪は牽連犯になります。
そのように最高裁決定昭和58年9月27日が判示しています。
他に、当初は身代金目的がなく、未成年者略取罪、未成年者誘拐罪や、営利目的誘拐罪、営利目的略取罪、 わいせつ目的略取罪、わいせつ目的誘拐罪、結婚目的略取罪、結婚目的誘拐罪、生命身体加害目的略取罪、生命身体加害目的誘拐罪、所在国外移送目的略取罪、所在国外移送目的誘拐罪を犯した者についても、本罪の主体になり得ます。
刑法の学説上、上記略取罪、誘拐罪に該当しないが、略取・誘拐を実行した者については、本罪の主体になり得るとする説があります。
そして、近親者その他略取・誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じて、その財物を交付させ、または要求する行為をすることが必要です。
近親者その他略取・誘拐された者の安否を憂慮する者については、親子、夫婦のような近親者以外に、どこまでの範囲に広がるかという問題があります。
詳細は、身代金目的略取罪、身代金目的誘拐罪の箇所で説明しておりますので、ご覧いただけたらと思います。
本罪については、誘拐後、被害者を殺害後に、近親者へ身代金を要求した場合に、成立するかどうかについて、学説の見解が分かれています。
本罪は、犯人が公訴の提起前に被害者を安全な場所に解放したときは、その刑が減軽されます(刑法228条の2)。
犯人が犯罪から後退する道を与え、被害者の安全な解放をはかろうとしたものと考えられています。
本罪は、未遂についても処罰されます(刑法228条)。
略取・誘拐についての罪は、親告罪のものが多いですが、本罪は親告罪ではありません。
ですから、被害者等による告訴は必要ありません。