わいせつ目的略取罪とは、わいせつ目的で人を略取する犯罪です。
わいせつ目的誘拐罪とは、わいせつ目的で人を誘拐する犯罪です。
わいせつ目的略取罪も、わいせつ目的誘拐罪も、刑法225条に規定があります。
わいせつ目的略取罪、わいせつ目的誘拐罪は、その刑事罰がいずれも1年以上10年以下の懲役となっています。
わいせつ目的略取罪、わいせつ目的誘拐罪が成立するためには、犯人がわいせつ目的を有することが必要です。
わいせつ目的とは、被害者に対して強姦や強制わいせつなどの性的行為をする目的のことです。
犯人自らが被害者に対して性的行為をする目的がある場合だけでなく、第三者が被害者に対して性的行為をするような場合や、被害者に性的行為をさせるような場合も含むと言われています。
また、被害者に、いかがわしい業務に就かせる目的の場合も含むとする学説や、単なる同棲をする目的の場合も含むとする学説もあります。
裁判例で多いのは、女性への強姦目的と、幼女への強制わいせつの目的がある場合です。
略取は、暴行・脅迫を手段として、人を生活環境から不法に離脱させて、自己・第三者の事実的・実力的支配化におくことです。
誘拐は、欺罔・誘惑を手段として、人を生活環境から不法に離脱させて、自己・第三者の事実的・実力的支配化におくことです。
東京高裁判決平成20年7月9日は、18歳の女性に対し、わいせつ目的で、人気のない路地・空き地・駐車場・ビルの陰等に連れ込んだ事案について、被害者の年齢・心理状態、強制わいせつの被害を受けてから被告人が現行犯逮捕されるまでの経緯、被告人が被害者を連れ回した距離、その際の被害者の状況及び本件現場付近の状況並びにこれらの点についての被告人の認識等、本件における具体的状況に照らすと、被害者を人気のない路地・空き地等に連れ込む行為は、略取行為に当たると解し、わいせつ目的略取未遂罪の成立を認めました。
この事案で、弁護人は、被害者を連れ回しただけでは、自己の実力支配化におくことにはならないと主張していましたが、この主張は認められませんでした。
本罪は、未遂犯も罰しますので、誘拐に失敗した場合も未遂犯として処罰されます。
なお、誘拐には成功したが、わいせつ行為には失敗した場合は、未遂犯ではなく、本罪の既遂犯として処罰されます。
誘拐の後、強制わいせつや強姦が行われた場合は、それらの罪が別に成立します。
また、本罪は、親告罪です。
つまり、被害者等の告訴がないと、刑事裁判として公訴提起ができないものです。
また、略取・誘拐後に、犯人と被害者が婚姻したときには、婚姻の無効または取消しの裁判が確定した後でなければ、告訴の効力がないと規定されています。
規定はありませんが、離婚した場合には、告訴は有効になるとする学説があります。
被害者の告訴があり、犯人が公訴提起された後、犯人と被害者が婚姻した事案について、名古屋高裁金沢支部判決昭和32年3月12日は、婚姻成立により告訴の効力が消滅すると判示し、有罪とした1審判決を破棄して、公訴棄却としました。