過失致死罪

過失致死罪とは、過失により人を死亡させる犯罪のことです。過失致死yurei_man3_sad.png
過失致死罪の規定は、刑法210条です。
過失致死罪の刑事罰は、50万円以下の罰金です。

故意に人を死なせてしまうと、殺人罪が成立しますので、故意ではなく過失によって人を死なせてしまった場合が過失致死罪になります。

過失については、複雑な刑法上の議論がありますが、一般的な言葉としては、過ちやミスと言い換えることもできると思われます。
法的には、注意義務違反と言われることが多いです。
つまり、注意をする義務があるのに注意をしなかったことにより死亡の結果が発生してしまった場合、過失が認められます。

これについて、古い考え方は、過失を人の内心の主観的問題であることを重視しました。
そして、注意をしていれば結果発生を予測できたのにしなかったということが、過失の中心とされてきました。

これに対し、新しい過失の考え方は、結果発生を予測できるかどうかではなく、結果発生を回避できたかという点を過失の中心として考えています。
この新過失論では、結果を回避すべきなのにしなかったという客観的な行為の面が重視され、行為者の内心が中心ではなくなります。

実務的には、結果発生を予見できる状態で、結果発生を回避する義務があるのにそれを怠ったということが過失として考えられていると思います。

また、人が死亡することが、過失致死罪の要件として必要です。
人の死についても、刑法上の議論があります。
それは、心臓死説と脳死説の争いです。

心臓死説は、三徴候説とも言われ、①自発呼吸の停止、②心臓(脈)の停止、③瞳孔反射機能などの停止を総合して人の死を判断するもので、古くから採られている見解です。
多数の場合は、この見解に則って、人の死を判断して問題ありません。

脳死説は、脳死状態からの臓器移植が認められた、いわゆる臓器移植法の制定により、脳死状態の人から臓器移植をすることが法律上可能となったこともあり、有力に唱えられている学説です。
ただし、脳死説を採らないと、脳死状態の人からの臓器移植ができないわけではなく、心臓死説でも臓器移植法で認められた要件を満たせば、脳死状態の人に対する臓器移植手術の結果、その人が心臓死に至ったとしても、医師が殺人罪に問われることはないとします。

したがって、心臓死説か脳死説かは、実際上の差異はあまりありません。
心臓死説の学者は、脳死説をとると、脳死状態の人に包丁を刺して心臓死させる行為は、死体損壊罪にしかならないというのは、まだ社会的に受け入れられていないと主張します。
心臓死説では、脳死状態の人に包丁を刺して心臓死させる行為は、殺人罪になります。

過失致死罪については、それほど適用される事例がありません。
それは、過失によって人を死亡させる可能性が高い交通事故の場合には、過失運転致死傷罪が成立するからです。
また、人を死亡させる危険のある行為は、何らかの危険な業務であることも多く、その場合は業務上過失致死傷罪が成立します。
他に、重大な過失がある場合は、重過失致死傷罪が成立します。
これらの犯罪が成立せず、しかも過失がある場合に、過失致死罪が成立するのですが、それはあまりありません。

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