礼拝所不敬罪

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礼拝所不敬罪とは、神祠(しんし)、仏堂、墓所その他の礼拝所に対し、公然と不敬な行為をした者に成立する犯罪のことです。

礼拝所不敬罪の規定は、刑法188条1項に規定されています。
また、礼拝所不敬罪の刑事罰は、6月以下の懲役禁錮または10万円以下の罰金です。

礼拝所不敬罪の刑法188条から、「第二十四章 礼拝所及び墳墓に関する罪」が規定されています。
これらの罪の保護法益は、健全な宗教的風俗や宗教的感情であると解されています。
ただし、これらの犯罪のうち、変死者密葬罪(刑法192条)は、死体に関する犯罪であることから、便宜上この章に規定がされているだけと考えられています。
つまり、変死者密葬罪は、宗教的なものを保護するためではなく、刑事捜査や警察的な目的から設けられたものと解されています。

神祠とは、神道において神を祭った施設のことです。
仏堂とは、仏教における寺院などの礼拝の施設のことです。
墓所とは、人の遺体・遺骨を埋葬・安置して、死者を祭祀・記念する場所とされます。
その他の礼拝所とは、キリスト教の教会やイスラム教のモスクなどのその他の宗教における礼拝の場所のことです。
この点、既存の宗教とは関係ない施設でも、一般の宗教的感情により崇敬の対象とされている場所であれば、礼拝所に該当するとの見解もあります。
この見解では、例えば、広島市にある原爆死没者慰霊碑や、沖縄県にあるひめゆりの塔も、礼拝所に該当することになります。
なお、礼拝の対象となっていることが必要との見地から、社務所や庫裡のような神社・寺院の関連施設でありながら礼拝の対象になっていない施設は、礼拝所には該当しないと解されています。

本罪の実行行為は、公然と不敬の行為をすることです。
公然とは、不特定または多数人が認識しうる状態のことです。
最高裁決定昭和43年6月5日は、午前2時~6時ころに墓地の墓碑を押し倒した行為について、公然であることを肯定しています。
この事案では、墓碑が倒された状態が継続し、夜明けになれば、公衆の目に触れることから、公然であることが認められることに学説も賛成しています。

不敬の行為とは、礼拝所の尊厳を害する行為のことです。
例えば、墓石を倒すことや、侮辱的発言をすることが該当します。
東京高裁昭和27年8月5日は、「小便でもひっかけてやれ」等と言いながら墓所に放尿するような格好をした行為について、不敬の行為に該当する旨判示しています。

 

 

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