公印不正使用罪とは、公務所・公務員の印章・署名を不正に使用し、または偽造した公務所・公務員の印章・署名を使用した場合に成立する犯罪のことです。
公印不正使用罪は、刑法165条2項に規定されています。
公印不正使用罪の刑事罰は、公印偽造罪と同じで、3月以上5年以下の懲役です。
公務所の定義は、刑法7条2項において規定されています。同項で、官公庁その他公務員が職務を行う所をいうと規定されています。
公務員の定義は、刑法7条1項で規定されています。同項で、国・地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員をいうとされています。
日本銀行の役職員は、国・地方公共団体そのものではありませんが、法令で公務員とみなされており、刑法上の公務員に該当すると考えられています。
印章の定義は、人の同一性を表示するために使用される象形(文字・符号)と考えられています。
署名とは、人が自己のことを表す文字で氏名等を表記したもののことです。自署(サイン)だけでなく、ゴム印等の記名も該当するというのが判例です。
不正に使用とは、真正な印章・署名を権限がないにもかかわらず他人に対して使用することです。
使用というのは、他人が閲覧できる状態にすることが必要と考えられています。実際に他人が閲覧したことまでは必要ありません。
また、公印等の不正使用によって、他人が財産的な損害を受けたことも要件ではありません。
偽造した印章・署名を使用したというのは、要するに、権限なしに作られた印章・署名を使用した場合のことです。
偽造の具体的内容については、公印偽造罪の説明箇所を見ていただけたらと思います。
偽造行為は、自ら行った場合でも、第三者が行った場合でも構いません。
また、偽造行為が、行使の目的で行われたかどうかも問われません。
したがって、本罪の前提として、何者かの公印偽造罪が成立している場合が多いですが、必須ではないということになります。
公印の不正使用がなされた上で、有印公文書偽造罪や有価証券偽造罪に至った場合は、公印不正使用罪は有印公文書偽造罪や有価証券偽造罪に包摂されて独立した犯罪を構成しないと考えられています。
また、公印偽造罪を自ら犯して、さらに、公印不正使用罪を犯した場合は、両罪が成立し、牽連犯(刑法54条1項後段)の関係に立ちます。