支払用カード電磁的記録不正作出準備罪とは、支払用カード電磁的記録不正作出罪の犯罪行為の用に供する目的で、①代金・料金の支払用カードまたは預貯金の引出用カードの電磁的記録の情報を取得した場合、②情を知ってその情報を提供した場合、③不正に取得された電磁的記録の情報を保管した場合、④器械・原料を準備した場合に成立する犯罪です。
支払用カード電磁的記録不正作出準備罪は、刑法163条の4において規定されています。
同罪の刑事罰は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
本罪は、支払用カード電磁的記録不正作出罪の事前段階の準備行為を処罰の対象としています。
本罪の実行行為のうち、①代金・料金の支払用カードまたは預貯金の引出用カードの電磁的記録の情報を取得した場合とは、例えば、クレジットカードのスキミングをしてカード情報を取得することが該当します。クレジットカードそのものを取ってしまった場合には、本罪ではなく、窃盗罪になります。
②情を知ってその情報を提供した場合とは、支払用カード電磁的記録不正作出罪に利用されることを知った上で、支払用カードを構成する電磁的記録の情報を教えたり、情報を利用できる状態にしたりすることです。
③不正に取得された電磁的記録の情報を保管した場合とは、不正に取得されたことを認識し、その不正な電磁的記録の情報を自己の管理下に置くことです。
例えば、不正な情報を自分のパソコンに保存したり、USBメモリに保存したりして、自分で管理することが、該当します。
④器械・原料を準備したとは、支払用カード電磁的記録不正作出罪に必要な器械・原料を用意することです。
具体的には、スキミングに使用する器械(スキマー)や不正なカード作成の原材料を用意することが該当すると思います。
これらの実行行為は、いずれも支払用カード電磁的記録不正作出罪の犯罪行為の用に供する目的のもとで行われることが必要です。
そのような目的を有することが要件となる犯罪を目的犯といいます。
支払用カード電磁的記録不正作出罪を自ら犯す目的でも、他人が支払用カード電磁的記録不正作出罪を犯すことに加担する目的でも、どちらでも本罪が成立するものと思われます。
これらのうち、①代金・料金の支払用カードまたは預貯金の引出用カードの電磁的記録の情報を取得しようとして失敗した場合だけ、未遂犯として処罰されます(刑法163条の5)。
支払用カード電磁的記録不正作出準備罪を犯した者が、その準備行為に止まらず、支払用カード電磁的記録不正作出等罪を犯した場合には、支払用カード電磁的記録不正作出準備罪は支払用カード電磁的記録不正作出罪に吸収され、結局、支払用カード電磁的記録不正作出罪だけが成立するものと思料されます。