偽造公文書行使等罪とは、①詔書偽造罪、詔書変造罪、有印公文書偽造罪、有印公文書変造罪、無印公文書偽造罪、無印公文書変造罪、虚偽公文書作成等罪、公正証書原本不実記載罪、免状等不実記載罪に規定された偽造・変造・虚偽作成・不実記載の文書・図画を行使した場合、または②公正証書原本不実記載罪のうちの不実の記録のされた電磁的記録を公正証書の原本としてのように供した場合に成立する犯罪です。
偽造公文書行使等罪は、刑法158条に規定があります。
偽造公文書行使等罪の刑罰については、同条で「その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は不実の記載若しくは記録をさせた者と同一の刑に処する。」と規定されています。
つまり、それぞれの文書が規定されている偽造罪などと同じ刑罰になります。
したがって、例えば、偽造の詔書を行使した場合には、詔書偽造罪と同様、無期懲役または3年以上の懲役が科せられます。
本罪の対象となる客体については、それぞれの犯罪の説明部分に記載されているのと同様ですので、それぞれをご確認してください。
行使する者が自ら偽造したことは必要なく、見知らぬ第三者かが偽造したものでも本罪は成立します。
ただし、行使する者が、それが偽造等されたものであることを認識していることが要件として必要です。
ですから、それが偽造の文書だと知らずに行使してしまった者について、本罪が成立することはありません。
また、偽造文書等について、それが行使の目的をもって作成されたことも必要ないとされています。
したがって、偽造公文書行使等罪が成立したからといって、その前提に、何らかの偽造罪が成立しているとは限りません。
行使とは、真正な文書として使用することです。
例えば、本人確認で、運転免許証(公文書)の提示を求められた場合に、偽造の運転免許証を提示することは、行使に該当します。
店舗に備え付けることが必要な飲食店営業許可証(免状)を店舗に掲示することも、行使です。
ただし、偽造の運転免許証を自動車運転時に携帯していただけでは、いまだ他人の閲覧に供してその内容を認識しうる状態に置いたとはいえないから、行使にあたらないとした判例があります(最高裁判決昭和44年6月18日)。
これに対し、交際していた女性から、将来のために貯金してくれるよう頼まれたところ、郵便貯金通帳を偽造してその女性に渡した事案で、行使に該当するとした判例があります(大審院判決昭和7年6月8日)。
また、不実記載の公正証書の原本については、行使は、その登記簿等が公務所に備え付けられたとき(一般公衆が閲覧できる状態に置くこと)に行使に該当すると言われています。
したがって、不実記録の公正証書の電磁的記録を「用に供した」ということについても、それに準じて考えることができると思われます。
本罪は、未遂犯も処罰されます(刑法158条2項)。