有印公文書変造罪とは、公務所・公務員が押印・署名した文書・図画(とが)を変造した者に成立する犯罪のことです。
有印公文書変造罪の規定は、刑法155条2項にあります。
この犯罪の刑事罰は、有印公文書偽造罪と同じで、1年以上10年以下の懲役です。
有印公文書変造罪の対象(客体)は、公務所・公務員が押印・署名した文書・図画です。
つまり、公務員・公務所がその権限に基づいて作成する公務員・公務所名義の文書・図画である公文書・公図画が対象となります。
公文書の具体例としては、、判決書、運転免許証、印鑑登録証明書、パスポート(旅券)などがあります。
判例で公図画と認められたものとして、旧日本専売公社のたばこ「光」の外箱(最高裁判決昭和33年4月10日)、法務局の土地台帳付属の地図(最高裁決定昭和45年6月30日)があります。
押印とは、印鑑を書面に押し付け印影を顕出させることです。
署名とは、いわゆる自署に限る説と記名も含むとする説で、争いがありますが、古い裁判例で記名を含むとしたものがあります。
公務員・公務所の押印・署名のある文書・図画を変造した場合に、本罪が成立します。
変造とは、文書等の名義人でない者が権限なしに既に存在している真正な文書の内容を改ざんすることです。
例えば、運転免許証の裏面の備考欄の住所変更記載部分を変更し、住居変更手続を済ませたかのように装った行為が、変造に該当するとした裁判例(東京地裁判決平成19年2月16日)があります。
ただ、既に存在している真正な文書を改ざんした場合に、その改ざんが文書の本質的部分に及び、これにより改ざん後の文書が改ざん前の文書との同一性を失ったと評価される場合には、偽造に該当すると言われています。
最高裁判決昭和35年1月12日は、運転免許証の写真を貼り替えて生年月日を改ざんした場合に、変造ではなく、偽造に該当する旨判示しています。