詔書偽造罪とは、行使の目的で、御璽(ぎょじ)・国璽(こくじ)・御名(ぎょめい)を使用して、詔書その他の文書を偽造し、または偽造した御璽・国璽・御名を使用して、詔書その他の文書を偽造する犯罪です。
詔書変造罪とは、御璽・国璽を押し、または御名を署した詔書その他の文書を変造する犯罪です。
詔書偽造罪は、刑法154条1項で規定されており、詔書変造罪は、刑法154条2項で規定されています。
詔書偽造罪と詔書変造罪の刑事罰は、いずれも、無期懲役または3年以上の懲役です。
詔書偽造罪、詔書変造罪を規定している154条から、刑法の「第17章 文書偽造の罪」となります。
文書偽造の罪は、文書が真正であることに対する公衆の信用を保護するためのものです。
文書の真正については、2つの意味があるとされています。
①成立(名義人)の真正…文書を作成した者(名義人)が真正であること。
②内容の真正…文書内容が真正であること。
そして、刑法は、第一に、名義人の真正の保護に重きを置いています。内容の真正には重きをいていません(例外的に処罰の対象としています)。
なぜなら、名義人が偽られていると、責任主体を偽られていることから、文書の責任追及が困難になるという大きな問題があるのに対し、名義人に偽りがなく内容の偽りだけであればその名義人に責任を追及することができ、大きな問題になりにくいからです。
詔書偽造罪における偽造とは、作成権限のない者が他人名義の文書を作成することです。
その意味で、内容が虚偽である文書を作成すること自体は、偽造ではありません。本罪における偽造かどうかは、その文書の名義を偽っているかどうかによるわけです。
つまり、本罪における偽造とは、文書の成立が真正でないものを新たに作り出すことです。
詔書変造罪における変造とは、名義人でない者が真正に成立した文書の内容を改ざんすることです。
ただし、本質的な部分を改ざんし、改ざん前の文書と同一性が失われた場合には、もはや変造ではなく、偽造になるものと解されています。
御璽は、天皇の印章です。
国璽は、日本国の印章です。
御名は、天皇の署名です。
詔書とは、天皇の国事行為に関する意思表示をする公文書のことです。具体的には、国会召集の詔書などがあります。
公文書のなかでも天皇の名義の文書は、保護の必要性が高いことから、特別に重い刑事罰が科されるものと思われます。
本罪は、行為者に行使の目的があることが必要です。
行使の目的とは、他人に対し、偽造文書を真正な文書であると誤信させる目的のことです。