偽造通貨等収得罪とは、行使の目的で、偽造・変造の貨幣・紙幣・銀行券を収得する犯罪です。
偽造通貨等収得罪の規定は、刑法150条にあります。 この犯罪の刑事罰は、3年以下の懲役に処すると規定されています。
偽造通貨等収得罪の対象は、偽造・変造の貨幣・紙幣・銀行券と規定されており、特に日本の通貨であることの記載はありませんが、日本の通貨に関する偽造通貨行使罪(刑法148条2項)と同じ言葉になっています。
そうすると、日本の通貨に限定されるという解釈も可能です。
ですが、一般的には、偽造通貨等収得罪の規定(刑法150条)が、外国通貨偽造罪、外国通貨変造罪(刑法149条1項)、偽造外国通貨行使等罪(刑法149条2項)の後に位置すること等から、日本に事実上流通する外国の通貨を偽造・変造したものも含むと考えられています。
したがって、本罪の対象は、偽造・変造された日本で通用する日本の通貨と日本で事実上流通する外国の通貨です。
偽造は、権限のない者が通貨に似た外観の物を作成することであり、変造は、権限のない者が真正の通貨を加工して通貨に似た外観の物を作成することです。
詳しくは、通貨偽造罪、通貨変造罪の説明をご覧ください。
偽造・変造した者が行使の目的を有していたことは必要ありません。
収得とは、偽造・変造された通貨であることを知りながら取得することです。拾うことを意味する拾得とは字が異なります。
もらう場合(贈与)や買い受ける場合(売買)、盗む場合、騙し取る場合をいずれも含みます。
ただし、預かっていた物を横領した場合(特に、預かった時点では偽造であることを知らなかったとき)については、学説上の争いがあります。
横領は既に自己の占有下にあり、占有の移転がないことから取得に該当しないとする説と、横領の場合を除外する実質的意味が乏しいから取得に該当するという説があり、両説の争いに決着は付いていないと思われます。
偽造通貨であることを知りながら取得した上、偽造通貨を使用した場合には、偽造通貨等収得罪と偽造通貨行使罪が成立し、両罪は牽連犯(刑法54条1項後段)の関係にたちます。
偽造通貨であることを知らずに取得し、後で偽造であることを知って偽造通貨を使用した場合には、偽造通貨収得後知情行使等罪(刑法152条)が成立します。
それから、収得の時点で、行使の目的があることが必要です。
行使の目的とは、自ら流通に置く目的または他人が流通に置く目的のいずれも含みます。
偽造通貨等収得罪は、未遂も罰せられます(刑法151条)。