通貨偽造罪、通貨変造罪

通貨偽造罪とは、行使の目的で、通用する貨幣・紙幣・銀行券を偽造する犯罪です。

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通貨変造罪とは、行使の目的で、通用する貨幣・紙幣・銀行券を変造する犯罪です。

通貨偽造罪も、通貨変造罪も、刑法148条1項に規定があります。
通貨偽造罪、通貨変造罪の刑事罰は、無期懲役または3年以上の懲役(20年以下) です。

通貨偽造罪、通貨変造罪の客体は、通用する貨幣・紙幣・銀行券です。いわゆる通貨です。
貨幣とは、政府が発行する硬貨のことです。現在日本で発行されている硬貨は、500円、100円、50円、10円、5円、1円の6種類です。このことは、通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律5条1項で規定されています。ただ、国家の記念事業として発行される記念貨幣は、他に1万円、5000円、1000円の硬貨を発行できます(同条2項)。
紙幣とは、政府が発行する貨幣に代用される証券のことです。ただし、現在の日本では紙幣は政府によって発行されていません。現在日本で流通しているのは、銀行券(日本銀行券)です。
銀行券とは、政府により権限を与えられた特定の銀行が発行する毛丙に代用される証券のことです。現在の日本では、日本銀行が発行する日本銀行券のみが存在します。
日本銀行券として認められているのは、1万円、5000円、2000円、1000円です(日本銀行法施行令13条)。

通用するとは、日本で強制通用力があるという意味です。
貨幣は、通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律7条によって強制通用力が認められていますが、額面価格の20倍までという限定があります。それは、つまり、支払を受ける側が、100円玉20枚までは受取を拒否できない(強制通用力がある)けど、21枚目以上は受取を拒否できる(強制通用力がない)ということです。
日本銀行券は、日本銀行法46条によって、無制限の強制通用力が認められています。したがて、日本銀行券は1000円札が仮に100枚でも受け取りを拒否することはできません。
外国の通貨は、日本で強制通用力を認められていませんので、本罪の対象外です。外国通貨偽造罪などが刑法149条で規定されています。
また、古い日本の貨幣、紙幣、銀行券で、強制通用力を失っているものは、本罪の対象外です。

偽造とは、 権限のない者が通貨に似た外観の物を作成することです。判例上、一般人から見て、真正な通貨と誤認する程度に似ていることが必要とされています。
例えば、1万円札を両面カラーコピーして同じ大きさに切ったものを作成すれば、一般人から見て真正な通貨と誤認する程度に似ているといえると思います。
偽造しようとしたが、結果としてできあがった物が一般人が誤認する程度に至らなかった場合は、通貨偽造罪の未遂犯となります(未遂犯も処罰されます。刑法151条)。
また、一般人が誤認しない程度に通貨に似た(紛らわしい)物を作成しようとして実際に作成した場合には、通貨及証券模造取締法で処罰対象となっています。

変造とは、権限のない者が真正の通貨を加工して通貨に似た外観の物を作成することです。
例えば、真正の1000円札を表と裏に剥がし、さらに切断したものに厚紙をはさんで折ったものをのり付けし、折りたたまれた1000円札のように見えるものを多数作成することが、変造に該当します。これは実際にあった最高裁の判決の事案です。
元々の真正の通貨と同一性のないものができあがったと評価される場合には、変造ではなく、偽造とされます。
具体的に、どのようになると、同一性がないと判断されるかについては、非常に微妙で、明確な基準はないと思われます。
広島高等裁判所高松支部判決昭和30年9月28日は、8枚の1000円札から、その一部をつなぎ合わせて1枚の1000円札に似た物を作成した事案について、偽造にあたると判示しています。

偽造・変造については、行使の目的が必要とされています。
行使の目的とは、真正の通貨として流通に置く目的のことです。
自分で使用する目的でなく、他人に使用させる目的であっても、行使の目的を認めるのが判例(最高裁判決昭和34年6月30日)です。
学校の教材で使用する目的の場合は、行使の目的が認められません。
ただし、通貨の模造を処罰する通貨及証券模造取締法では、行使の目的のない場合も処罰対象とされています。

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