浄水毒物等混入罪とは、人の飲料に供する浄水に毒物そのほか人の健康を害する物を混入したことで成立する犯罪です。
浄水毒物等混入罪は、刑法144条において規定されています。
同罪の刑事罰は、3年以下の懲役です。
浄水毒物等混入罪の客体である人の飲料に供する浄水とは、浄水汚染罪と同様で、飲料水のことです。
例えば、井戸水や水瓶に貯めた水、ウォーターサーバーの水が該当します。
水道水は、水道毒物等混入罪(刑法146条前段)の対象となり、本罪の対象にはなりません。
また、不特定または多数の人が飲むための飲料水であることが必要であり、1人が飲むためのコップの水は、本罪の対象ではありません。
不特定または多数とは、それほど厳密ではなく、数人の家族のための飲料水であれば、構いません。
浄水とは、人が飲料しうる程度の清潔な水であれば良いです。
毒物とは、化学的作用により人の健康を害する物のことと思料されます。
例えば、青酸カリやダイオキシンなどがこれに該当すると思われます。
そのほか人の健康を害する物とは、寄生虫や細菌のような毒物以外の人の健康に有害な物質のことです。
これらの物を故意に混入することにより、本罪が成立します。
したがって、故意ではなく、誤って毒物を混入してしまった場合には、浄水毒物等混入罪は成立しません。
また、毒物等を少しでも混入しただけでは本罪は成立せず、浄水が人の健康を害する程度になったことが必要とする学説もあります。
ただ、この学説でも、実際に飲用した人が健康を害したことまでを必要としてはいません。