水利妨害罪とは、堤防を決壊させ、水門を破壊し、その他水利の妨害となるべき行為をする犯罪です。
水利妨害罪は、刑法123条前段に規定されています。
水利妨害罪の刑罰は、2年以下の懲役もしくは禁錮または20万円以下の罰金です。
水利妨害罪は、財産としての水利・水利権を保護するためのものです。
水利(権)とは、農業用水、工業用水、発電用水、飲料用水などで水を利用すること(権利)です。
水の利用のうち、交通手段としての水路の利用は刑法124条以下の往来妨害罪などで保護されることになりますので、水利妨害罪における水利には含まれません。
また、水道による飲料水としての利用については、刑法142条以下の浄水汚染罪、水道汚染罪などで保護されますので、水利妨害罪の水利には該当しません。
水道ではない飲料水としての利用の場合は、水利に含まれます。
水利妨害罪は、現住建造物等浸害罪などのいわゆる出水罪の規定と共に、刑法の「第10章 出水及び水利に関する罪」のなかで規定されています。
ですが、犯罪の性質としては、出水罪は公共の危険を発生させる犯罪であるのに対し、水利妨害罪は財産としての水利を保護する犯罪であることから、両者は異なるものです。
ただ、水利妨害罪と、出水罪の一つである出水危険罪(刑法123条後段)とは、犯罪行為が重なっていることなどから、一緒に規定されています。
水利妨害罪の実行行為は、堤防の決壊、水門の破壊、その他出水させるべき行為です。
刑法123条後段で例示されている堤防の決壊、水門の破壊以外の行為としては、浄水施設の破壊や貯水を流失させる行為などがあります。
また、実際に水利権を有する被害者が存在することが必要と解されていますが、被害者の権利が法的権利として確立していることまで必要かどうかについては学説上の論争があります。
ただ、実際に水利権が侵害されたことは必要ではなく、その危険性のある行為がなされれば、水利妨害罪が成立します。