消火妨害罪とは、火災の際に、消火用の物を隠匿し、損壊し、その他の方法により消火を妨害した場合に成立する犯罪です。
消火妨害罪は、刑法114条に規定されています。
消火妨害罪の刑罰は、1年以上10年以下の懲役です。
火災の際とは、 現に火災が発生した状態または火災がまさに発生しようとしている状態のことと解されます。
火災の原因は放火に限らず、自然発火や失火などの場合も含み、原因は問いません。
火災が発生していない防火訓練を妨害したとしても、消火妨害罪は成立しません。
火災について、火が点いた状態がどの程度であることが必要かについて、学説で争いがあります。
まず、公共の危険が発生した程度、つまり延焼の可能性が発生している程度であることが必要とする説があります。
これに対し、そこまでは不要であり、簡単に消火できない程度、消火を怠れば公共の危険が発生し得る程度の出火であることが必要とする説があります。
また、社会通念上の火災と言い得るものであれば足りるとする説もあります。
妨害行為については、妨害の方法に関して特に制限は無いと考えられています。
刑法114条には、消火用の物を隠匿・損壊という方法が記載されており、消火用の物には消火器、消火用のホース、消火栓、消防車等が該当します。
隠匿とは、物の発見を不可能または困難にすることです。
損壊とは、物を物理的に破壊し、その使用を不可能または困難にすることです。物理的に壊して消火能力を減少させただけでも損壊に該当するとの見解もあります。
他の妨害の方法については、消防車の出動を妨げる行為や、消防士の活動を妨げる行為などを含みます。
消防士に暴行・脅迫して妨害することも、消火妨害罪が成立します。
消火妨害罪は、抽象的危険犯と言われています。
つまり、実際に消火行為に支障が生じたことは不要であり、支障が生じるおそれのある妨害行為が行われた時点で、消火妨害罪が成立します。