騒乱罪とは、多衆で集合して暴行または脅迫をする犯罪のことです。
刑法106条に規定されています。
騒乱罪の刑罰は、以下のように、参加者の役割によって異なります。
①首謀者は、1年以上10年以下の懲役または禁錮です。
②他人を指揮し、または他人に率先して勢いを助けた者は、6月以上7年以下の懲役または禁錮です。
③不和随行した者は、10万円以下の罰金です。
多衆とは、多数の人間が集まった状態のことです。
どの程度の人数で多数になるかについては、明確な基準がありません。
最高裁判所判決では、一地方の平穏を害するに足りる程度の暴行脅迫をなすに適当な人数という基準が示されています。
集合した人間が武装しているかどうか、武装の程度なども影響すると言われています。
集合とは、一定の時点に同じ場所に集まることです。
集合の状態として、組織化されている必要はなく、いわゆる烏合の衆でも構わないとされています。
首謀者が存在する必要もありません。
これに対し、多数の集合が必要で騒乱罪に似た内容の犯罪である内乱罪(刑法77条)においては、国家転覆等の目的のために組織化された集団である必要があります。
他方、騒乱罪が成立しない程の人数の集団による暴行・脅迫は、暴力行為等処罰に関する法律に規定されている集団的暴行・脅迫罪(1条)に該当します。
暴行とは、暴行罪が成立する程度の、直接人に対する有形力の行使である必要はなく、物に対する有形力の行使も含む最広義のものと解されています。
公務執行妨害罪における暴行も広い概念とされ、直接人に対するものに限らず、物に対するものも含みますが、あくまで人に向けられたと評価できることが必要であり、騒乱罪の暴行より狭い概念です。
脅迫とは、害悪の告知のことですが、脅迫罪の脅迫と異なり、告知される害悪の内容を問わないとされます。
最高裁判例は、暴行・脅迫の程度として、一地方の平穏を害するに足りる程度が必要としています。
また、騒乱罪における暴行・脅迫は、集団として行われることが必要です。
一部の者が偶発的に行っただけの場合には、騒乱罪には該当しません。
集団として行われたといえるためには、集合した多衆の共同意思に基づくことが必要と言われています。
共同意思とは、最高裁判例において、①多衆の合同力を恃(たの)んで自ら暴行脅迫をなす意思、②多衆をしてこれをなさしめる意思と③暴行・脅迫に同意を表し、その合同力に加わる意思の3種類があるとされます。
集合した多衆の者がいずれかの意思を有している場合、多衆の共同意思が認められるとされます。
この共同意思は、お互いに意思の連絡をしている必要はありません。
首謀者とは、その名前のとおり、主導した者のことで、いわゆる中心人物です。
首謀者に最も重い刑罰が科されますが、首謀者の存在がなくても、騒乱罪は成立します。
また、首謀者は、現場で指揮等をせずとも、主導した立場であれば該当します。
他人を指揮した者とは、多衆の一部または全部に指揮をした者のことです。
他人に率先して勢いを助けた者とは、率先助勢者ともいいます。
多衆の合同力を恃んで自ら暴行・脅迫をなし、または多衆をしてなさしめる意思で、多衆にぬきんでて騒乱を容易ならしめ、その勢いを助長・増大した者とされます。
不和随行した者は、首謀者・指揮者・率先助勢者以外の多衆の構成員のことです。
自ら暴行脅迫をしなくても共同意思を有していると認められれば、不和随行者に該当すると解されています。
騒乱罪が成立する場合には、暴行罪、脅迫罪は成立しないとされています。
ただし、それ以外の犯罪である、殺人罪や傷害罪、強盗罪、恐喝罪、公務執行妨害罪等は別に成立し、騒乱罪と観念的競合の関係に立つとするのが判例です。