逃走援助罪とは、法令により拘禁された者を逃走する目的で、①器具を提供するなどの逃走を容易にすべき行為をする、②暴行・脅迫をする犯罪です。
逃走援助罪は、刑法100条に規定があり、①の罪が1項、②の罪が2項で規定されています。
刑罰は、①の罪が3年以下の懲役、②の罪が3月以上5年以下の懲役です。
逃走援助罪は、その名のとおり、逃走を援助する犯罪です。
逃走する本人は基本的に逃走罪に該当するのですが、その刑罰は1年以下の懲役のため、逃走罪より逃走援助罪の方が刑罰が重くなっています。
このように刑法が規定している趣旨は、拘束されている本人が逃走したい心情になることは無理ないところがあるのに対し、援助するだけの側はそのような配慮は不要であることがあります。
本人が罪を犯してでも逃走したい心情になることを法的に表す表現として、期待可能性が低いなどと言います。罪を犯さないことを期待できる状況かどうかという点です。
逃走援助罪の対象になるのは、法令により拘禁された者です。
法令により拘禁された者とは、広く法的根拠に基づいて国家機関から身体の自由を拘束されている者のことです。
被拘禁者奪取罪の対象も、法令により拘禁された者です。
法令により拘禁された者については、被拘禁者奪取罪のところで詳しく説明していますので、そちらをご覧いただけたらと思います。
逃走援助の具体的行為としては、まず①の罪では、逃走の役に立つノコギリやロープなどの器具を提供したり、逃走経路を教えたりすることが典型的な行為です。
これらのような逃走を容易にする行為が行われれば、実際に逃走が失敗したとしても、逃走援助罪が成立します。つまり、本人の逃走が失敗しても未遂ではありません。
②の罪の行為は、暴行・脅迫です。
この暴行・脅迫は、加重逃走罪の暴行・脅迫と同様に解されており、広く解されています。
暴行とは、看守者への直接的な暴行だけでなく、間接的な暴行も含み、 暴行罪における暴行より広い概念です。
脅迫とは、人を畏怖させる害悪の告知を広く含み、脅迫罪が成立しない場合でも逃走援助罪が成立し得ます。
法令により拘禁された者を逃走させる目的で、暴行・脅迫が行われた場合には、逃走に失敗しても逃走援助罪が成立する点は、①の罪と同じです。