被拘禁者奪取罪とは、法令により拘禁された者を奪取した場合に成立する犯罪です。
被拘禁者奪取罪の規定は、刑法99条です。
同罪の刑罰は、3月以上5年以下の懲役です。刑法98条の加重逃走罪と同一の法定刑になっています。
法令により拘禁された者とは、法的根拠に基づいて国家機関から身体の自由を拘束されている者を広く含むと解されています。
つまり、逃走罪の対象となっている「裁判の執行により拘禁された既決・未決の者」や、加重逃走罪の対象となっている「裁判の執行により拘禁された既決・未決の者または勾引状の執行を受けた者」より対象が拡大されています。
逃走罪、加重逃走罪で対象になっていないが、被拘禁者奪取罪の対象になっていると考えられているものとして、以下のようなものがあります。
①現行犯逮捕されて勾留の段階になっていない者。
②緊急逮捕されて逮捕状が発せられる前の者。
③少年院に収容されている者。
④少年鑑別所に収容されている者。
⑤出入国管理及び難民認定法により入国者収容所等に収容されている者。
被拘禁者奪取罪の対象にもならない者として、児童自立支援施設に送致された児童、精神保健福祉法により措置入院・仮入院になった者が挙げられます。
奪取とは、被拘禁者を看守者の実力支配から離脱させ、自己または第三者の実力支配下に移すことです。
ただ被拘禁者を解放するだけの場合には、奪取には該当せず、被拘禁者奪取罪は成立しないとするのが学説の多数説の見解です。この場合、逃走援助罪(刑法100条)に該当することになります。
これに対し、ただ解放する場合も奪取に該当するという見解もあります。
いずれの見解であっても、被拘禁者が看守者の支配から離脱する意思があるかどうかは問いません。
被拘禁者が望もうと望むまいと、この者を看守者のもとから離脱させて自己の支配下に移せば、被拘禁者奪取罪が成立します。
被拘禁者奪取罪は、未遂も処罰されます(刑法102条)。