内乱幇助罪とは、内乱を手伝う犯罪です。
刑法79条に内乱幇助罪の規定があります。同条で、内乱幇助罪の刑罰は、7年以下の禁錮とされています。
刑法79条には、兵器、資金、食糧を供給し、またはその他の行為により、内乱罪(内乱未遂罪を含みます)、内乱予備罪、内乱陰謀罪を幇助した者を内乱幇助罪として処罰することが規定されています。
具体的な行為として、兵器、資金、食糧の供給が記載されていますが、これらは例示であり、「その他の行為」でも、内乱に必要な情報を提供する行為や、陰謀を行う会議場所を提供する行為も内乱幇助罪が成立すると思われます。
幇助とは、手伝いや手助けのことです。より正確には、犯罪の実行を容易にすることです。内乱罪について、そのような行為を行えば、内乱幇助罪が成立します。
また、幇助については、刑法62条に一般的規定があり、全ての犯罪について、その実行を容易にする行為をした場合には、共犯の一つである幇助犯として処罰されることが規定されています。
したがって、例えば、他人が殺人を犯した場合に凶器を提供する行為をした者は殺人罪の幇助犯として刑罰が科されます。
ですので、刑法79条の内乱幇助罪の規定がなかったとしても、内乱罪などの幇助犯として刑罰が科されるのです。
そこで、刑法79条の内乱幇助罪の存在意義がどこにあるかが問題となります。
一般の幇助犯は、正犯の刑を減軽すると刑法63条に規定されており、例えば有印公文書偽造罪(刑法155条1項)の幇助犯は、同罪の刑罰である1年以上10年以下の懲役の長期と短期がそれぞれ半減し、6月以上5年以下の懲役となります。
内乱罪の刑罰は、犯人の地位によって異なり、また内乱予備罪、内乱陰謀罪は1年以上10年以下の禁錮とされているところ、内乱幇助罪は7年以下の禁錮として、刑罰をひとまとめにしているところに存在意義を見出すことができます。
内乱幇助罪の存在意義が他にもあるかどうかについて、学説上の争いがあります。
この点、刑法62条の幇助犯については、正犯(犯罪を自ら実行する者)の犯罪が成立した場合にしか幇助犯が成立しないのに対し、内乱幇助罪は正犯の内乱罪や内乱予備罪などが成立していなくても、内乱の手助け行為さえ行われれば内乱幇助罪が成立すると主張する学説があります。
この学説は、内乱幇助罪は、いわゆる独立幇助罪と考える説です。
この説に反対し、あくまで内乱罪などの正犯が成立した場合にしか内乱幇助罪も成立しないとする学説もあります。
この点に関する裁判例はなく、学説上の争いに決着は付いていません。