境界損壊罪

境界損壊罪とは、境界標を損壊、移動、除去し、またはその他の方法により、境界標土地の境界を認識することができないようにする犯罪です。

境界損壊罪は、刑法262条の2に規定されています。
その刑罰は、5年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

境界損壊罪は、境界標を損壊等する犯罪であり、境界標とは、柱や杭、柵などの土地の境界を示す標識のことです。
本罪の対象となる境界標は、他人の所有する境界標だけでなく、自分が所有する境界標も含みますので、自分が所有する境界標を壊したのだとしても犯罪になってしまうのです。
民法では、土地の境界標の設置及び保存の費用は、隣り合っている者同士が等しい割合で負担すること(民法224条)、境界線上に設けられた境界標等は隣り合っている者が共有しているものと推定されること(民法229条)が規定されていますが、このような共有の境界標でも境界損壊罪が成立します。
また、個人間の境界だけでなく、市町村の境や県境の境界標を壊した場合も境界損壊罪が成立すると言われています。
それから、境界標が本当の境界とは違う場所に設置されている虚偽の境界標だとしても、境界損壊罪が成立するというのが判例の主流の考え方です。
境界標が地下に埋まっているものであっても、境界損壊罪は成立します。
ただ、境界を示す図面を壊しても、境界損壊罪には該当しませんが、公用文書等毀棄罪私用文書等毀棄罪器物損壊罪のいずれかに該当する場合があります。

境界標を損壊、移動、除去またはその他の方法により土地の境界を認識することができないようにしたことが必要です。
結果的に、土地の境界を認識することができなくなったことが必要ですから、境界標にキズを付けた程度では境界を認識することは可能と思われ、境界損壊罪は成立しません。
境界を認識することができなくなったというのは、どうやっても境界が分からなくなったことが必要なわけではなく、他に新たな境界を確認する方法をとらなければ境界が分からない状態になれば十分です。
境界標として設置されていた有刺鉄線が張られている丸太約30本をノコギリで根本から切り倒した事案で、いまだ境界が不明になっていないとして境界損壊罪の成立を否定した最高裁判決があります(最高裁判決昭和43年6月28日)。

境界標を移動させた上、他人の土地を占有した場合には、境界損壊罪だけでなく、不動産侵奪罪が成立します(境界損壊罪と不動産侵奪罪は牽連犯とされます。)。

 

 

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