建造物等損壊罪とは、他人の建造物・艦船を損壊する犯罪です。
建造物等損壊罪は、刑法260条に規定されています。
建造物等損壊罪の刑罰は、5年以下の懲役です。
私用文書等毀棄罪の刑罰と同じです。
建造物とは、家屋その他これに類似する建築物のことです。
屋根や壁、柱などがあり、少なくとも人が出入りできることが必要とされています。
建造物を構成する一部でも損壊すれば、本罪が成立する場合があります。
この点、古い裁判例で、建造物に該当するには、毀損せずに取り外せないことが必要としたものがあります。
ですが、屋根瓦やドライバーで取り外せる玄関ドアも、建造物に該当するとの判決があります。
艦船とは、軍艦と船舶のことです。
実際に航行することができる能力があることが必要であり、廃船となっているものは含みません。
船の中に人がいるかどうかは問われません。
中に人がいる艦船を破壊した場合には、重い艦船破壊罪(刑法126条2項。無期懲役または3年以上の懲役。)だけが成立します。
建造物等損壊罪が成立するのは、他人の建造物等ですが、それは他人が所有する建造物等ということです。
最高裁で「他人の建造物」に該当するかどうか争われた事例で、以下のようなものがあります。
元々被告人が自分で所有していた建物に根抵当権を設定していたところ、その根抵当権が実行されて競売となり、競落した者に対する所有権移転登記が経由された後、裁判所の執行官がその建物について不動産引渡命令の執行をしようとした際、被告人が建物の損壊した事案で、被告人が根抵当権設定の意思表示は詐欺によるものとしてこれを取り消したから建物は依然として自己所有であると主張していました。
最高裁は、将来民事訴訟等において詐欺の主張が認められる可能性を否定し去ることができないとしても、建物は他人の建造物に当たるというべきであると判示し、建造物損壊罪の成立を認め、有罪としました(最高裁決定昭和61年7月18日)。
損壊とは、本来の効用を喪失させることです。
物理的に破壊することは、損壊です。
また、最高裁において、大量のビラを貼り付けた行為(最高裁決定昭和41年6月10日)、落書き(最高裁決定平成18年1月17日)を損壊と認めています。
また、建造物等損壊の結果、人が死亡または傷害を負ったときには、「傷害の罪と比較して、重い刑により処断する」と規定されています(刑法260条後段)。犯罪名としては、建造物等損壊致死傷罪と言われます。
刑罰としては、傷害を負わせた場合に、傷害罪と建造物等損壊罪を比較して、法定刑の上限と下限の重い方に従うものと解されます。つまり、重い傷害罪の15年以下の懲役となると思われます。
死亡させてしまった場合には、重い傷害致死罪の3年以上の有期懲役になります。