昏睡強盗罪とは、人を昏睡させてその財物を盗む犯罪です。
刑法243条に規定されています。
昏睡強盗罪は、「強盗として論ずる」と規定されていることから、強盗罪と同じ刑罰が科されます。
つまり、5年以上20年以下の懲役です。
昏睡強盗罪は、事後強盗罪と同様、準強盗罪と呼ばれます。
昏睡強盗罪は、睡眠薬や麻酔薬、アルコールを飲ませるなどして昏睡状態にさせた隙に盗みを行うものです。
昏睡といっても、完全に意識を喪失させる必要まではないと考えられています。
裁判例でも、バーテンダーが客にウォッカの入ったカクテルをアルコールは入っていないと嘘をついて提供して飲ませ、ほとんど意識不明の状態にまで酔いつぶれさせた上で客の財布を抜き取った事案で、昏睡強盗罪が認められています(横浜地裁判決昭和60年2月8日)。
昏睡強盗罪が成立するのは、犯人自らが被害者を昏睡させた場合です。
自己の関与なしに昏睡状態にあるのを利用して盗みを行った場合は、昏睡強盗罪にはならず、窃盗罪が成立するだけです。
また、昏睡させる時点で、盗みを行う意思(故意)が必要かどうか学説上問題とされていますが、通説的見解は昏睡させる時点で盗みを行う意思があることが必要と考えています。
したがって、昏睡させたときには盗みを行う意思はなかったが、昏睡状態になった後で盗みを行う意思が生じて盗みを行った場合には、昏睡強盗罪は成立せず、窃盗罪が成立することになります。
同じような犯罪で、準強姦罪、準強制わいせつ罪(刑法178条)があります。
準強姦罪、準強制わいせつ罪も、昏睡強盗罪と同様に、睡眠薬やアルコールを被害者に飲ませるなどして抵抗できなくなったことを利用する場合に成立する犯罪です。
ただし、準強姦罪、準強制わいせつ罪は、昏睡強盗罪と異なり、自らの関与なしに既に抵抗不能な状態になっているのを利用した場合にも認められることが規定されています。
つまり、刑法178条では、「人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ」た場合にも、準強姦罪、準強制わいせつ罪が成立する旨規定されているのです。