民法(債権法)改正の解説1 [なぜ民法改正なのか]

2020年4月1日に施行される民法(債権法)改正について、解説していきたいと
思います。

民法は、みなさんにとって一番身近な法律といえると思います。
その民法が債権法を中心に大きく改正されることになりました。

民法大改正の理由

なぜ、民法(債権法)が改正されることになったのでしょうか。民法改正.jpg

一言で言えば、1896年(明治29年)に民法が制定されて以来120年もの間、一度も大きな改正がされていなかったからといえます。
当然ですが、120年もの間に、世の中は大きく変わっています。
この間、世の中の変化に対応するために、新たな法律が作られ、また法改正も行われてきました。
ただし、根本となる民法については、必要に応じたわずかな改正は重ねられているものの、抜本的な改正はされませんでした。

それは、元々、民法が時代の変化に対応できる柔軟さと普遍性を有していたこと、法解釈を行う学者や裁判官などの実務家により法改正を行わなくても済むように工夫され運用されてきたことの賜物だと私は思っています。
当時、多くの実務家(弁護士、裁判官)は、民法を抜本的に改正する必要性を認識していなかったと思います。

とはいえ、120年間という時間の経過により、明らかに古く通用しない規定が残っていたことも事実ではありました。

民法改正の経過

そして、平成21年10月に、法務大臣が法制審議会に対し、民法の債権法に関して見直しを行うことを内容とする諮問をし、法制審議会において債権法改正の部会が設置されました。
法曹界、法律の学会では、民法改正に反対する学者、実務家などにおいて、そもそも改正の必要がないという反対意見や慎重意見、民法改正は法務官僚と一部学者の陰謀だという主張まで出たこともありました。

その後、5年以上かけて法制審議会で議論が重ねられ、平成27年2月24日、法制審議会において「民法(債権関係)の改正に関する要綱」が採択され、同年3月31日、民法改正の法案が国会に提出され、衆議院参議院でそれぞれ附帯決議が付された上で、平成29年(2017年)5月26日に民法改正の法案が賛成多数で成立したものです。
そして、民法改正は、一般の生活や企業の取引など多くの影響が生じることから、施行されるのは約3年後の2020年4月とされました。

所管する法務省の説明

法務省の民法改正に関するパンフレットでは、今回の民法改正について、「①約120 年間の社会経済の変化への対応を図るために実質的にルールを変更する改正と,②現在の裁判や取引の実務で通用している基本的なルールを法律の条文上も明確にし,読み取りやすくする改正を行っています。」と説明されています。

次回以降、具体的な民法改正の条文について説明していきたいと思います。

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