前回、婚約が成立する要件について主としてお話しましたので、今度は、婚約が成立することによって発生する効果についてお話したいと思います。
婚約によって結婚を強制できるか
婚約は将来結婚する約束ですので、その約束の履行を求める、つまり結婚することを強制的に求めることができると考えることもできそうですが、どう思われますか。
双方が婚約して結婚する意思があるのであれば、強制させる必要はありませんので、問題になるのは片方が婚約した後に結婚する気をなくした場合です。そのような状態で、強制的に結婚しても、幸せな結婚生活は送れそうにありませんね。
それでも、とにかく強制的に結婚したいと思われたとしても、法的には強制できません。あくまで結婚は、男女の結婚しようとする意思があって成り立つものだからです。ただし、婚約の履行を求める調停を家庭裁判所に申し立て、話し合いの場を裁判所に設けることは可能とされています。ですが、まずそのような調停をする方はいないようです。
婚約破棄の効果
婚約を強制的に履行することはできませんので、あとは婚約が破棄された場合の法的効果が問題となります。
その場合、婚約破棄した者について正当理由が認められるかどうかによって異なる法的効果が生じます。例えば、婚約を破棄した男性が、婚約者とは別の女性と交際を開始して婚約破棄したというのであれば、原則として婚約破棄に正当理由は認められません。それでは次に、婚約破棄に正当理由がない場合とある場合に分けて法的効果をお話します。
婚約破棄に正当理由がない場合
正当理由がないのに婚約破棄をした者は、損害賠償責任を負います。賠償すべき損害は、精神的損害と財産的損害に分けられます。
精神的損害とは、いわゆる慰謝料のことです。慰謝料の金額は、個別の事情により変わりますので、相場というのは明確にはありません。ただし、一般的な範囲としては、50万円~200万円程度に収まるのではないかと思います。ですが、婚約破棄の正当理由がないとしても、婚約破棄に至ったことについて、当事者の男女が互いにどの程度問題があったのかによって金額は大きく変わりますので、やはりかなり幅があると思っていただいた方がいいと思います。
また、財産的損害としては、結婚式場のキャンセル料や新居のマンションの敷金などが該当し、婚約破棄に正当理由がない者が原則として負担すべきということになります。ただし、家具を新規に購入した場合については、そのまま使えることも考えられ、損害として認められないとした判決もあります(損害として認めた判決もあります。)。また、特に女性が寿退社してしまった場合に、給与1年分などが損害として認められた判決があります。女性に問題があって婚約破棄となった場合、婚約指輪の費用も財産的損害として認められる可能性がありますし、結納金は返還しなければならないものと思われます。財産的損害について、婚約破棄の正当理由がない者が必ず全額を負担することになるとは限らず、精神的損害と同様、男女が互いにどの程度問題があったかによって、全額ではなく一部の負担が認められることも考えられます。
婚約破棄に正当理由がある場合
婚約破棄に正当理由がある場合には、損害賠償責任は発生せず、慰謝料請求などはできないことになります。
問題は、結婚に向けてかかった費用の清算の問題ということになります。正当理由がない場合の財産的損害と同様、結婚式場のキャンセル料や新居の敷金、家具購入費用などが清算の対象となると思われますが、法律に明確に記載されておらず、どのように清算するのかは、むずかしい問題です。折半にするというのが公平だとは思いますが、裁判例で必ずしも折半すると明確になっているわけではありません。また、結納金は、男性側に返却されることになります。婚約指輪は一旦贈与が有効に成立しており、必ずしも費用として清算の対象になるとは限りません。基本的には、当事者間のお話し合いで、それまでの事情や双方の収入や資力に応じて柔軟に解決されていることが多いのではないかと思います。
最後に
婚約破棄については、そもそも婚約が成立しているかも含めてむずかしい問題が多くあります。
もし、婚約破棄でお困りの場合は、ご自身だけで判断するのではなく、弁護士にご相談していただくことをおすすめします。
横浜ロード法律事務所では、初回45分の無料相談を受け付けておりますので、お気軽にご連絡ください。