弁護士と弁護人
みなさんは、弁護士と弁護人の違いをご存知でしょうか?
おそらく、弁護士はよく聞く言葉だけど、弁護人という言葉はあまり聞かないという方が、多いのではないかと思います。
どっちも同じ意味なんじゃないの?と思われるかもしれません。
弁護士と弁護人は、法律的に、異なる意味の言葉です。
弁護士とは
弁護士とは、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によつて、訴訟事件、非訟事件及び行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする者のことです。このことは弁護士法3条1項で規定されています。
また、弁護士法72条1項では、弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して代理その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができないと規定されており、弁護士法72条に違反すると、2年以下の懲役または300万円以下の罰金という刑事罰が科されます(弁護士法77条3号)。
以上のように、弁護士は、法律事務を行うことを職務とする者のことです。
弁護士は、一般の方がイメージされる内容でだいたい間違っていないと思います。
そして、弁護士になるためには、弁護士の資格が必要であり、そのためには、原則として、司法試験に合格した上で、司法修習を終えることが必要となっています。
弁護人とは
そうすると、弁護人はどこが違うんだろうということになりそうです。
弁護人とは、刑事事件において、被疑者や被告人の弁護を任務として行う者のことです。
このように、弁護人は、刑事事件のみで使用される言葉です。
そして、弁護人は、原則として、弁護士の中から選任されることになっています。
つまり、弁護士が、刑事事件で、被疑者等から依頼を受けて弁護活動を行う場合は、法律上、弁護人と呼ばれることになっているのです。
この点、分かりにくいから、刑事事件でも弁護士のままで良いようにもみえます。
ですが、弁護士ではない者が弁護人になる特別弁護人というものが刑事訴訟法で例外的にですが、認められています。
例えば、帝王切開手術後に妊婦が死亡したことについて、担当医師が業務上過失致死罪等で逮捕・起訴されたところ無罪判決となり、社会問題にもなった大野病院事件では、現役の医師が特別弁護人に選任され、弁護士の弁護人と共に、弁護活動を行いました。
弁護士ではない者が刑事事件で弁護活動を行う場合があり得るため、やはり弁護人という言葉を使用することが必要なのだと思います。
ニュースでは
ニュースでは、このような弁護士と弁護人の意味の違いが、きちんと区別されていないことが多いように思います。
弁護人という言葉を用いるべき場合に、弁護士という言葉が用いられていることがよくあります。
今度、刑事事件のニュースを見たとき、弁護人という言葉が使われているかチェックしてみてください。
きちんと弁護人という言葉が使われている場合は、法律にうるさい人が原稿を作ったのかもしれません。
まあ、弁護士でも弁護人でも意味は通じるので、あまり問題はないと思います。