人の自転車を勝手に使った後に元に戻したら窃盗罪にならない!?

自転車泥棒

古い映画で「自転車泥棒」というのがあるのはご存じですか。名作の1つといわれています。025112.jpgその映画の主人公のように、私も自転車を泥棒されて、途方に暮れたことがありますが、自分の自転車が盗まれたら本当に許せないですよね。でも、それが2時間後には元の場所に戻っていたら、どうでしょうか。「戻ってきてよかった!」とは思いますが、やっぱり犯人は許せないでしょうね。
では、元の場所に戻した場合、法律的には、やはり窃盗罪になると思いますか。

法律上の取扱い

法律的には、最初から他人の自転車を勝手に数時間乗ってその場に返すつもりでいた場合、窃盗罪は成立しないといわれています。法律に、「数時間で返すつもりならいい」と規定されているわけではありませんが、数時間で自転車を返すつもりの場合、法律の解釈上は、一時使用として窃盗にあたらないとされています。
実際の事件で、深夜に女性を暴行するために自宅近くに置いてある他人の自転車を無断借用した者について、窃盗については無罪とされたものがあります。
これを説明する法律用語として、「不法領得の意思」というものが問題になります。興味のある方は、図書館などで刑法の本を読まれることをおすすめします。

窃盗にあたる場合

だからといって一時使用であれば必ず窃盗罪が成立しないというわけではありません。他人の自動車を元の場所に戻すつもりで4時間ほど乗り回した行為について不法領得の意思を認め、窃盗罪の成立を認めた裁判例もあります。
何が違うかといえば、「自転車」と「自動車」という点ですね。自動車を乗り回すことによってガソリンがなくなるので、自転車とは違うなどといわれています。それでは、最近よく見かける電動自転車はどうなるんでしょうか。電気がなくなるという意味では自動車に近い部分がありますが、あくまで自転車は自転車ですね。私見としては、電動自転車は自動車同様、窃盗罪が成立するのではないかと思いますが、電動自転車を問題にした文献を見たことがなく、自信は全くありません。
それから、 窃盗罪が成立するかしないかは、単に自動車か自転車かということだけではなく、利用した状況がどのようなものであるのか、使用した時間など具体的状況によって判断が変わってきます。自転車の使用が長時間であったり、乗り捨てるつもりであったりすれば窃盗罪が成立することとなる可能性が高いです。

最後に

このように、自転車の一時使用は窃盗ではないと聞くと、「自転車泥棒が蔓延するだけではないか」、「一時使用も処罰すべきだ」、「法の不備だ」と思われる方もいるかもしれません。
ですが、一時使用を処罰することになると、ほんの少しだけ人の物を使った場合が全て犯罪になりかねいのです。例えば、会社の同僚のデスクの上に、ちょっと気になる雑誌が置いてあったときに、相手が仲のいい人なら少しだけ勝手に読んでもいいかな、と思うことはありますよね。そんな場合にまで窃盗罪というのはやり過ぎですし、そもそも窃盗とはいえないですよね。そこで、法律の解釈上、許される一時使用というのがあるのです。許されるギリギリセーフのラインが自転車を数時間(2~3時間)乗って元に戻すことだと考えてもらえたらと思います。
いうまでもなく、人の物を勝手に使ってはいけないのですから、そのようなことを勧めるものではありません。また、以上のことは「刑事」の問題であり、「民事」上は勝手に使った分の使用料や損害賠償が請求されかねません。それから、「一時使用」といくら言っても、それが状況的に認められない場合には、窃盗で有罪になる可能性も大いにありますし、その場で逮捕されてしまう可能性も十分あります。
ということで、間違っても人の自転車を勝手に拝借するのは、やめてくださいね。

 

 

 

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