詐害行為取消権の期間の制限について規定している民法426条が改正されています。
改正前と改正後の条文
改正前の民法426条の条文は、以下のとおりです。
第424条の規定による取消権は、債権者が取消しの原因を知った時から2年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から20年を経過したときも、同様とする。
改正後の民法426条の条文は、以下のとおりです。
詐害行為取消請求に係る訴えは、債務者が債権者を害することを知って行為をしたことを債権者が知った時から2年を経過したときは、提起することができない。行為の時から10年を経過したときも、同様とする。
この規定について、解説したいと思います。
詐害行為取消権の期間の制限
民法426条は、詐害行為取消権の期間の制限について規定しています。
2年の期間制限
詐害行為取消権行使が基本的に2年という制限がある点については、変更がありません。
ただし、細かな点で変更があります。
まず、改正前は2年の時効による権利の消滅とされていましたが、改正後は出訴期間としました。
これにより、民法147条等の時効の完成猶予や更新により期間の延長がされることは認められなくなりました。
次に、2年間の期間制限の起算点について、改正前は「債権者が取消しの原因を知った時から」とされていましたが、改正後は「債務者が債権者を害することを知って行為をした時から」という表現になりました。
この点については、改正前の最高裁判決が、起算点について、「債務者が債権者を害することを知つて当該法律行為をした事実を知つた」時点としていたこと(最高裁判決昭和47年4月13日)を受けたものであり、判例の表現を条文にしたものです。
したがって、条文としては表現が変更されているものの、実質的な運用に変更はないということになります。
10年の期間制限
改正前は「行為の時」から20年の期間制限が規定されていましたが、改正後は「行為の時」から10年の期間制限に短縮されました。
20年もの長期にわたって法律関係が安定しないのは適切ではないという意見から、10年になりました。
また、2年の期間制限があるのに、なぜ別に10年の期間制限があるのかと不思議な感じがする方もいるかもしれません。
2年の期間制限は、債権者が債務者の詐害行為を知っていた場合の2年の期間制限です。
他方、債権者が債務者の詐害行為を知らないまま年数が経過した場合においても、詐害行為が行われた時点から10年が経過すると、詐害行為取消権の行使ができないというのが10年の期間制限が意義をもつ場面になります。
細かな点ですが、改正前の20年の期間制限は、条文上は2年と同様の消滅時効のようですが、時効のように援用が必要なく時効の中断等もない除斥期間と解釈されていました。
改正後は、10年についても出訴期間ということで2年の場合と統一されました。
経過附則
経過附則により、詐害行為が改正民法の施行日令和2年4月1日以降に行われた場合に、改正後の規定が適用されます。それ以前の詐害行為は旧民法の適用を受けます。