不可分債権について規定している民法428条が改正されています。
改正前と改正後の条文
改正前の民法428条は、以下のとおりでした。
債権の目的がその性質上又は当事者の意思表示によって不可分である場合において、数人の債権者があるときは、各債権者はすべての債権者のために履行を請求し、債務者はすべての債権者のために各債権者に対して履行をすることができる。
改正後の民法428条は、以下のとおりとなりました。
次款(連帯債権)の規定(第四百三十三条及び第四百三十五条の規定を除く。)は、債権の目的がその性質上不可分である場合において、数人の債権者があるときについて準用する。
以下において、解説したいと思います。
不可分債権
民法428条は、新旧ともに、不可分債権についての規定です。
不可分債権は、複数の債権者がいる場合に問題となります。
例えば、YとZが共同でAから別荘を購入した場合にYとZがAに対して別荘を引き渡すように請求する権利については、別荘を2つに分けて引き渡すことはできないため、不可分債権になります。
複数の人間が1つの物を引き渡すように請求権を有する場合には、その物を分けることができないため、不可分債権になります。
そして、民法428条は、不可分債権について、連帯債権の規定を準用するとしました。
連帯債権とは、今回の改正で新たに条文が設けられたものです。
連帯債権については、また別途詳細な解説をしますので、そちらをご確認いただけたらと思います。
複数の債権者が、それぞれ債務者に対して可分な請求権を有しており、そのうち1人の債権者が請求の履行を受ければ全ての債権者の請求権が消滅するのが連帯債権です。
あまり実例は多くないのですが、先ほどのYとZが共同で購入した別荘を1泊2万円で第三者に貸し出した場合の2万円の請求権は、連帯債権です。
そして、不可分債権は、連帯債権の432条が準用されることで、各債権者は、全部の履行を請求でき、その債務者は債権者の1人に対して履行すれば不可分債権が消滅するものとされています。
また、不可分債権において、その債務者が債権者の1人に対して債権を有する場合に相殺を援用したとき、他の債権者との間でも相殺の効力を生じます(連帯債権の434条の準用)。
なお、複数の債権者がいるときに不可分債権ではない場合には、分割債権ということになります。
例えば100万円を支払うよう請求する金銭債権については、YとZで50万円ずつに分けられるため、分割債権です。
分割債権については、427条に規定されていますが、今回改正されていません。
不可分債権の定義の改正
今回の改正で、不可分債権の定義が変更されています。
改正前の民法では、債権の目的が性質上不可分である場合以外に、当事者の意思表示によって不可分とした場合も、不可分債権とされていました。
改正後の民法においては、債権の目的が性質上不可分である場合のみを不可分債権とすることになりました。
経過規定
改正附則20条1項により、施行日である令和2年4月1日より前に生じた不可分債権は、改正前の民法が適用され、施行日以後に生じた不可分債権については、改正後の民法が適用されます。