詐害行為取消請求の訴えの被告・訴訟告知について規定している民法424条の7が新設されています。
民法424条の7の規定
民法424条の7の規定は、以下のとおりです。
1 詐害行為取消請求に係る訴えについては、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定めるものを被告とする。
一 受益者に対する詐害行為取消請求に係る訴え 受益者
二 転得者に対する詐害行為取消請求に係る訴え その詐害行為取消請求の相手方である転得者
2 債権者は、詐害杭取消請求に係る訴えを提起したときは、遅滞なく、債務者に対し、訴訟告知をしなければならない。
本条について、以下において、解説したいと思います。
詐害行為取消請求の訴えの被告になるのは誰か
改正前のルール
改正前の民法では、詐害行為取消請求に関する規定は424条しかありませんでした。
そして、改正前の424条では、「裁判所に請求することができる。」と規定されていましたが、誰を被告にするかについて規定されていないものでした。
その点について、大審院判決明治44年3月24日が、山林が詐害行為により譲渡された事案で、債権者が取消しの相手とする特定の受益者または転得者だけを被告とすべきとし、詐害行為を行った債務者は被告とすべきではないとしました。
このような判例は、相対的構成をとっていると言われていました。
その後、この大審院判決のルールに従って、運用されていました。
改正での議論
今回の改正で、判例が債権者と特定の受益者・転得者だけの裁判とし、その者の間だけで取消しの効果を認める相対的構成を改正した方が良いという意見が出ました。
そこで、詐害行為取消請求を起こす債権者は、特定の受益者・転得者だけを被告とするだけでなく、詐害行為を行った債務者も被告とすべきかどうかが検討されました。
しかし、必ず、被告も一緒に被告にしなければならないとすると、和解による柔軟な解決の妨げになるおそれがある等の反対意見が出ました。
その結果、債権者が被告とすべきなのは、従来の判例どおり、特定の受益者・転得者だけとした上で、債務者に裁判手続へ参加して主張する機会を与えるために、債務者に訴訟告知をすることになりました。
これと共に、判決の効力が、債務者にも効力が生じることになりました(425条)。
424条の7第1項について
この結果、424条の7第1項において、詐害行為取消請求の訴えを起こす債権者は、以下の者を被告とする旨を規定しています。
①受益者に対する詐害行為取消請求の場合、その受益者を被告とする。
②転得者に対する詐害行為取消請求の場合、その転得者を被告とする。
424条の7第2項について
424条の7第2項では、債権者は、詐害行為取消請求の訴えを起こしたときは、遅滞なく、債務者に対し、訴訟告知をしなければならない旨が規定されました。
債権者が、債務者への訴訟告知をしない場合には、訴えが却下されるものと解釈されています。
経過規定
詐害行為が令和2年4月1日より前に行われた場合は、改正前の民法によることになります。