詐害行為取消請求の効果を規定する民法424条の6が今回の改正で新設されています。
民法424条の6の条文
民法424条の6の条文は、以下のとおりです。
1 債権者は、受益者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消しとともに、その行為によって受益者に移転した財産の返還を請求することができる。受益者がその財産の返還をすることが困難であるときは、債権者は、その価額の償還を請求することができる。
2 債権者は、転得者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消しとともに、転得者が転得した財産の返還を請求することができる。転得者がその財産の返還をすることが困難であるときは、債権者は、その価額の償還を請求することができる。
以下において、民法424条の6が規定している詐害行為取消請求の効果を解説していきます。
詐害行為取消請求の効果
財産の返還
民法424条の6は、詐害行為取消請求の効果について、基本的に以下のとおりとしています。
つまり、詐害行為の取消しとともに、基本的に債務者から移転した財産の返還を請求することができるものと規定しています。
例えば、債務者Vが知り合いW(受益者)に唯一の財産である自動車を時価が300万円であるのに100万円で売買する契約を締結して登録名義も変更したときに、債権者Xの受益者Wに対する詐害行為取消請求が認められる場合、基本的に債権者Xは受益者Wに対して、売買契約を取り消した上で、自動車の返還を請求することができます。
このことを規定しているのが、424条の6第1項前段です。
また、受益者Wが、転得者Yにその自動車を200万円で売買する契約を締結して登録名義を変更した後、債権者Xが転得者Yに対して詐害行為取消請求をすることが認められた場合には、債権者Xは転得者Yに対して、債務者の売買契約を取り消した上で、その自動車の返還を請求することが基本的に認められます。
この点について規定しているのが、424条の6第2項前段です。
それから、債務者Yが受益者Wに自動車の売買契約を締結したが、まだ引渡しも名義変更もしていない段階で、債権者Xが詐害行為取消請求をしたときのように、売買契約の取消しだけで済む場合は、債権者Xは売買契約の取消しだけすることもできます。
価額の償還
また、財産の返還が困難な場合があります。
例えば、先ほどの例で、受益者Wが転得者Yに自動車を売買する契約を締結して名義を変更した場合に、転得者Yが債務者Vの詐害行為について知らなかったときには、債権者Xは転得者Yに対して詐害行為取消請求をすることができません。
このとき、債権者Xは受益者Wに対して詐害行為取消請求ができたとしても、自動車の返還を請求することができません。
この場合には、債権者Xは受益者Wに対して価額の償還を請求することができます。
このことを424条の6第1項後段が規定しています。
それから、詐害行為について知っていた転得者Yがさらなる転得者Zに自動車を売って登録名義を変更した場合に、さらなる転得者Zが詐害行為について知らなかったときに、債権者Xはさらなる転得者Zに詐害行為取消請求をすることができず、転得者Yに対して詐害行為取消請求をすることができても、自動車の返還を請求することができません。
この場合も、債権者Xは、転得者Yに対し、価額の償還を請求することができます。
このことが424条の6第2項後段に規定されています。
また、価額の償還については、その財産の時価の金額になります。
したがって、受益者や転得者は、自分が払った金額がいくらかは別として、その財産の時価の金額を償還しなければならないのです。
先ほどの例だと、自動車の時価である300万円ということになります。
経過附則
経過附則により、施行日令和2年4月1日より前に詐害行為が行われた場合には、改正後の規定ではなく、改正前の規定の適用を受けます。